日本国内では、NTTドコモが提供する「Xi」やイー・アクセスが提供する「EMOBILE LTE」といったLTEサービスが提供され、注目を集めている。これらは高速な通信速度が魅力だが、エリアの充実度や実際の通信速度については、もう一歩、前進を期待したいところだ。

それでは、日本以外のLTEサービスの現状はどうなっているのだろうか。筆者は先日、Motorola Mobilityが開催したイベント取材でニューヨークに渡航したが、その際の通信手段として、米Verizon Wirelessが提供するLTE対応Wi-Fiルーターをレンタル利用した。使用感や実際の通信速度などをまとめたので、さっそくレポートしよう。

ニューヨークでLTE対応のWi-Fiモバイルルーターを使ってみた

今回利用したWi-Fiルーターのレンタルサービスは、ビジョンモバイルが提供する「グローバルWiFi」だ。空港での受取・返却に加えて、宅配便でも受取や返却ができるのが特長のサービスとなっている。利用期間は4日間で、レンタルしたVerizon Wirelessの「4G」対応Wi-Fiルーターの料金は、割引適用で970円/日。紛失時などの保険となる補償オプションの「ライトプラン」が525円/日となり、受渡手数料525円を加えて、4日間のレンタル料金の合計は6,505円となった。

なお、「4G」(第4世代)の定義はさまざまだが、Verizon WirelessはLTEネットワークを「4G LTE」として提供している。Verizon WirelessのLTEネットワークは、全米の371都市で利用でき、全人口の約75%をカバーしているという

レンタルした端末は、「4G LTE Mobile Hotspot MiFi 4620L - Verizon Jetpack」というWi-Fiルーターで、本体サイズは約95.5×59.9×13.5mm、重量は約90g。4G(LTE)に加えて、3G(CDMA2000 1xEV-DO Rev.A/Rev.0)に対応し、4Gで通信できない場合は自動的に3Gに切り替えて通信するようになっている。

Verizon Wirelessが提供するWi-Fiルーター「4G LTE Mobile Hotspot MiFi 4620L - Verizon Jetpack」

側面の右側にはmicro USBポートを搭載。通信時には、左側のLEDランプが点滅する

ニューヨークでは、タイムズスクエア周辺に滞在したが、市街でのWi-Fiルーターの通信はおおむね快適で、ルーターの液晶ディスプレイの表示でも「4G」で通信しているのが確認できた。スマートフォンアプリの「Speedtest.net」を用いて、レストランの店内で3回の計測を行ったところ、平均速度は下りが9.01Mbps、上りが0.22Mbpsとなった。下り速度では、最高15.36Mbpsを記録し、平均でも約9Mbpsとなるなど快適で、YouTubeなども問題なく視聴できた。上り速度はやや心もとない数字となったが、メールなどを送信するうえでは、ほぼ問題ない速度だと言えるだろう。

しかし、宿泊したホテルの室内での通信状態はやや不満の残るものとなった。同様に3回の計測を行ったところ、平均速度は下りが0.42Mbps、上りが0.19Mbpsだった。下り速度が1Mbpsにも満たず、PCでのWebブラウジングでも表示の遅さを実感した。液晶ディスプレイの表示では、「4G」で通信しているのを確認できたが、表示されるアンテナの本数が少なく、ホテル周辺のエリアでは4Gの電波が弱いようだった。

タイムズスクエア周辺のレストラン店内での計測結果。下り最大15.36Mbpsを記録した

ホテルの室内で計測したところ、下り速度は1Mbpsに満たなかった

通信速度に加えて困ったのが、4Gから3Gへの切り替えに関してだ。先述のように、使用したWi-Fiルーターでは、4Gのエリア外では自動で3Gに切り替えて通信する仕様になっていたが、この切り替えが上手くいかずに通信できない状態になってしまう現象がしばしば発生した。

4Gで通信が止まったときにルーターを確認すると、液晶ディスプレイには「4G Verizon Disconnect」と表示されていて、手動で「Connect」を選択して、再接続しなければならない。だが、4Gの電波が弱く接続が切断されたと思われるのに、再び4Gで接続しようとするため、再接続の操作をしてもなかなか接続できない。しばらく操作を繰り返すと、3Gに切り替わり、ようやく接続できるという具合だった。3Gで接続すれば、通信速度は劣るものの、途中で切断されてしまうことも少なく、安定して通信することができた。

4Gでの通信時。電波が弱いと、ステータスが「Dormant」(休止)となり、やがて「Disconnect」(切断)となる

3Gでの通信時。接続が成功すると、「Connected」と表示される

Webブラウザから端末の設定画面にアクセスできた。だが、通信を3Gに固定するといった設定項目は見当たらなかった

問題なく通信できているときには、4Gから3Gに自動で切り替わっていることもあったので、必ずしも毎回手動で再接続する必要があるわけではないが、切り替えに関しては改善の余地がありそうだ。なお、Webブラウザからアクセスできる設定画面も用意されていたため、4Gの通信を行わずに、3Gのみで通信するように固定できないかを確認してみたが、そのような設定項目を見つけることはできなかった。

日本では、LTEの普及の初期段階にあり、さらなるエリアの充実などが望まれる状況だが、今回、ニューヨークの一部でVerizon WirelessのLTEを使用した限りでは、アメリカでも磐石なサービスが提供されているというわけではなさそうだ。とりわけ、Wi-FiルーターのLTEと3Gの自動的な切り替えに関しては、日本で使用できる端末のほうが進んでいるように感じた。

今回は、アメリカでのLTEの現状を確認したかったため、「4G」対応のWi-Fiルーターをレンタルしてみたが、安定的な通信を望むのであれば、「3G」のみ対応のWi-Fiルーターを試してみるのも良いかもしれない。LTEネットワークの充実とともに、対応端末の改善にも期待したいところだ。

(記事提供: AndroWire編集部)