富士経済はこのほど、今年5月から7月にかけて実施した国内の主要製造業の業種別エネルギー消費の実態を「産業施設におけるエネルギー消費の実態総調査 2012」報告書にまとめて発表した。

エネルギーソースとしては、燃料が大半を占め、その中でも石油系燃料と石炭系燃料の比率が高く、ガス系燃料への燃料転換は根強い需要があるが構成比は4.0%。

業種別ではエネルギー消費量の多い鉄鋼業、有機化学工業製品製造業、石油製品・石炭製品製造業は燃料の構成比が90%以上だが、多くの業種では電力の消費量の方が燃料よりも多い傾向にあるという。

電力のうち、77%が系統から購入した電力であり、自家発電による電力は23%。2008年以降の石油系燃料をはじめとする燃料の高騰により、自家発電から系統への回帰が進みつつあったが、震災以降、電力不足などから自家発電設備の稼働率向上や導入の検討も行われている。

今回対象とした20業種の中で電力の消費量が多い業種は鉄鋼業、有機化学工業製品製造業、パルプ・紙・紙加工品製造業の順となり、自家発電の電力量が多い業種は、パルプ・紙・紙加工品製造業、鉄鋼業、有機化学工業製品製造業だった。

ソース別エネルギー消費量 資料:富士経済

用途別のエネルギー使用量では、加熱設備、冷熱・空調設備、その他生産設備、動力類(コンプレッサ、ポンプ、ファンなど)、照明設備に分け、さらに、加熱設備、冷熱・空調設備、その他生産設備は、電力、蒸気、燃料の熱源別に分析した。

加熱設備は炉や燃焼機器、乾燥機などであり、燃料を熱源にするものが8割を占める。鉄鋼業をはじめとする基礎素材型産業では原材料の熱分解、蒸留、融解などで大量の燃料エネルギーが消費される。一方、原材料が鉄スクラップ等のリサイクル原料の場合(鉄鋼業)や、細かな温度調整が必要な場合(非鉄金属製品製造業)などは電気を熱源とする電気炉が使用される。

冷熱・空調設備は、生産用冷凍機が工程内で冷却のために使用される他、食品製造業などでは原材料や製品の保存などでも使用される。空調については衛生管理が重要な食料品製造業やクリーンルームが必要となる電子部品・デバイス・電子回路製造業などの業種で消費量が大きい。

動力類は生産工程内で使用される動力エネルギーを指し、動力・搬送設備、コンプレッサ、ポンプ・ファンが該当。インバータ化が進むことで今後エネルギー消費量の減少が期待される。

動力・搬送設備はベルトコンベアなどでの自動搬送が一般的であり、どの業種でも使用されるが、重量物を搬送するパルプ・紙・紙加工品製造業、石油製品・石炭製品製造業、非鉄金属製品製造業や、特にベルトコンベアの流れ作業が多い清涼飲料製造業、電子部品・デバイス・電子回路製造業、輸送用機械器具製造業、モータを使用し部品の成型を行うプラスチック製品製造業などで消費量が大きくなる。

コンプレッサは空気を圧縮することで、材料の液化や気化もしくは圧縮、形成などを行う。鉄鋼業や窯業・土石製品製造業などの基礎素材型産業では素材の圧縮、圧延、押延、成型などの工程で使用される。この他、組立装置産業や食品製造業、清涼飲料製造業では、商品の組立、包装・充填などでも使用される。

ポンプはボイラの温水など液体の移動で、ファンは蒸気などの気体の熱を送るもしくは熱を除くために使用される。乾燥や洗浄、冷却などの工程を有する無機化学工業製品製造業、医薬品製造業、鉄鋼業、パルプ・紙・紙加工品製造業などの基礎素材型産業の使用比率が高い。

照明設備は全体の1%にも満たない。LED照明の導入なども進むことでエネルギー使用量の減少が想定される。

用途別エネルギー消費量 資料:富士経済