地デジやBlu-rayなどの著作権保護されたコンテンツが、ついにiOSデバイスで楽しめる日がやって来そうだ。公開されたばかりのiOSアプリ「Twonky Beam」でなにができるか、いずれ提供されるというアップデータがどのような役割を持つのか、解説してみよう。

現在のTwonky Beamでできること

Twonky Beamは、かんたんにいうと「映像を他の機器に転送できるメディアプレイヤー」。iPhone/iPadユーザならば、AirPlayに似た技術を持つプレイヤーアプリと理解すればいいだろう。

Twonky BeamはAirPlayをサポートするが、注目すべきはそこではない。多くのテレビやビデオレコーダーに採用されているデジタルコンテンツ共有規格「DLNA」が、Twonky Beamのコア技術だ。前述した「転送」は、正確にいえばDMC(Digital Media Controller)として動作するTwonky Beamが、同じLAN上に存在するテレビなどのDMR(Digital Media Renderer)対応デバイスに対しコンテンツの再生を指示することで、結果としてAirPlayに近い効果を得られる。

Twonky Beamは、受信したコンテンツを再生するプレーヤー(DMP)としての機能のほかに、DLNAサーバ(DMS、Digital Media Server)としての機能も備えているので、iOSデバイス上にある動画、あるいは受信した動画をストリーミング配信することができる。具体的な例でいうと、YouTubeなどのコンテンツをiPhoneで受信し、それをDMR対応のテレビへ転送(ビーム)すれば、大画面でYouTubeのコンテンツを楽しめる、というわけだ。

本日公開されたiOS版Twonky Beamには、YouTubeのほかvimeoなどの動画共有サイト、CNNやThe New York Timesといったニュース系動画サイトのリンクが張られているが、他のDLNAサーバ(DMS)をブラウズすることも可能だ。フルスクリーン時には隠れているためわかりにくいが、画面右上に表示されているホームボタンをタップすると、同じLAN上に存在するビデオレコーダなどDMSとしての機能を持つデバイスが一覧される。

ただし、ビデオレコーダ上にあるコンテンツの大部分は、現時点のiOS版Twonky Beamでは再生できない。それは、著作権保護技術の「DTCP-IP」をサポートしないためで、たとえ録画した地デジ番組が一覧に現れたとしても、iOSデバイス上での再生はもちろんビーム(DMRデバイスへのコンテンツの転送)もできない。

iOS版Twonky Beamのホーム画面。有料VODサービス「U-NEXT」にも対応している

DMR対応機またはApple TVに転送可能なコンテンツには、「Beam」ボタンが表示される

映像をテレビにビームすれば、大画面でコンテンツを楽しめる

将来のTwonky Beamでできること

しかし、Twonky Beamのリリースにあわせ、開発元のパケットビデオ社から興味深い補足事項が公表された。それは「ブルーレイ・レコーダ機器に保存された地上波デジタル番組等をTwonky Beamアプリケーションで再生する機能」を後日提供すること、すなわちDTCP-IPサポートのことだ。

iOS版Twonky BeamでDTCP-IPがサポートされれば、これまでiOSデバイスでは視聴できなかった(録画済の)地デジ放送や、Blu-rayなど著作権保護されたコンテンツを楽しめることになるのだ。

録画したテレビ番組を3~7インチ程度のハンディな画面で楽しみたいというニーズは高く、そのためだけにDTCP-IP対応のAndroid端末を購入する消費者も少なくない。仕様の世界共通化を基本とするApple製品だけに、ごく一部の国・地域の事情でDTCP-IPをサポートする可能性は限りなく低く、iPhone/iPadユーザはこの事態を半ば諦め気味に眺めていたはず。それが、Twonky BeamのDTCP-IPサポートで変わるのだ。

DTCP-IPのサポートは、これまで「ハードウェアによる制約」が半ば常識となっていた。それは不正利用防止をICなどの力でハードウェア的に解決してきたからであり、DTCP-IPのライセンス管理団体DTLA社の承認基準も、それほど厳しいものだったと推測される。Twonky Beamの開発元パケットビデオ社は、これをハードウェアの力を借りずに現実化したというわけだ。

ソフトウェアのみによるDTCP-IPの対応は、iOSデバイスが初ではなく、すでにAndroid端末向けには今年6月からDTCP-IP対応版Twonky Beamの配布が開始されている。ただし対応機種は限定的で、パケットビデオ社の公式発表では富士通「ARROWS X F-10D」とパナソニック「ELUGA Power P-07D」および「ELUGA Live P-08D」、シャープ「AQUOS PHONE ZETA SH-09D」と「AQUOS PHONE sv SH-10D」、ソニー「Xperia GX SO-04D」というAndroid 4.0搭載の6機種のみだ。

iOS版Twonky Beam向けDTCP-IP対応アップデートは、提供開始時期は未定ながら、Android版での実績があるだけに、実現されると考えてよさそうだ。iOSはMPEG2-TSの再生に対応しないため、録画済コンテンツを再生する場合、レコーダー側がトランスコード機能(MPEG2-TS→H.264/AVC変換)を備えているかどうかなど不明点も多く残るが、その検証はアップデートの公開を待ちたい。

iOS版Twonky Beamは、コンテンツをDLNAデバイス(DMR)またはApple TV(AirPlay)にビームできる

Twonky BeamはDLNAサーバ(DMS)としての機能も備えるため、iPhoneで撮影した写真や動画もビームできる

LAN上のDLNAデバイス(DMS)をブラウズしたところ。アップデート後は、この画面からビデオレコーダにアクセスし、録画済の地デジ番組をiPhoneで楽しむことができるようになるはずだ