8月初旬にWindows 8とともにRTMリリースが発表されたARM版の「Windows RT」だが、これに対応するデバイスの情報が出始めている。ASUS、DELL、Lenovo、Samsungが対応製品のリリースに向けた準備を進める一方で、部品供給問題から東芝が提供延期を決めたと報じられるなどなど、ベンダー間での温度差が広がりつつある。

公開済みのASUS/MS自身に加え、ASUS/DELL/Lenovo/Samsungの名が

この件については、米MicrosoftでWindowsチームを率いるSteven Sinofsky氏がBuilding Windows 8 Blogで「Collaborating to deliver Windows RT PCs」という記事を投稿し、説明を行っている。同社にとっては初めてのARMプロセッサを搭載したPCプラットフォームということもあり、提供にあたってはNVIDIA、Qualcomm、Texas Instruments (TI)のSoCメーカーの製品に限定し、ハードウェアベンダーも選定を行った形で提供に臨むなど、これまでのx86/x64アーキテクチャとは違う方針を採っていることで知られる。

現在、Windows RTデバイスとして公開されているのはASUSの「ASUS Tablet 600」と、Microsoft (製造はPegatron)の「Surface RT」の2製品だけだ。Microsoftによれば、このほかDELL、Lenovo、Samsungが同OS搭載デバイスの提供に意欲を見せており、特にDELLについてはPC製品部門バイスプレジデントのSam Burd氏のコメントがブログ記事中に紹介されており、そのコメントによれば間もなく同OS搭載デバイスに関する情報が提供できるという。

COMPUTEX TAIPEI 2012で公開されていたWindows RT搭載の「ASUS Tablet 600」

Microsoftの「Surface RT」

東芝はスケジュール延期? Acerは2013年第1四半期がターゲット

その一方で、東芝は部品供給の問題からWindows RTデバイスのローンチ延期を予定していると米Bloombergが報じている。東芝が組んでいるSoCメーカーはTIとのことだが、具体的にどの部品の供給がネックで製品ローンチを遅らせたかについては不明だ。

またAcerについては、2013年第1四半期をターゲットにWindows RTデバイスを市場投入していく意向であることが知られている。同社はMicrosoftがSurfaceを市場投入することに否定的な見解を示しており、特にARM版である「Surface RT」を199ドルで市場投入する計画だという話を警戒している。Windows RTデバイスのスペックを考えれば、Surface RTの199ドルでの市場投入はほぼ赤字ラインであり、Windows Store等での収入を期待できるMicrosoftを除けば、これに追随できるハードウェアベンダーは存在しないからだ。そのため、Surface RTには199ドルで販売されるという噂と、逆に他のベンダーよりも高めの価格設定で販売されるという両極端な2種類の噂が存在している。

Windows RTでは「Always-on, Always-connected」を重視

このほか、Building Windows 8 Blogの中でSteven Sinofsky氏はWindows RTの設計コンセプトについても触れている。Windows 8にも共通する話だが、昨今のスマートフォンやタブレット製品と同様に、同OSでは「Connected Standby」と呼ばれる「Always-on, Always-connected」(常時起動、常時接続)の動作が重視されている。従来のPCであれば、こうした動作でもバッテリ消費が高く、スマートフォンのように数十日規模の待機時間の実現は難しかったが、ARMの省電力性をこうした点で活用しようというのがポイントの1つだ。具体的にはHDビデオの再生で8~13時間程度、Connected Standbyで320~409時間程度を見込んでいる。

またタブレット/ノートPCのフォームファクタでディスプレイサイズは10.1~11.6インチ、バッテリサイズは25~42Whr、重量は520~1200g程度となる。どちらのフォームファクタを選択するかでサイズと重量は大きく変化するが、より身近に利用できるデバイスになるのがゴールの1つとみられる。

左がWindows RTのエンジニアリングプロトタイプで、右が現行スタイルのハードウェア