米Microsoftがタブレット製品「Surface」でハードウェア事業への進出を発表したことに関して、大手PCメーカーの1社である台湾Acerが「PC業界全体にネガティブな影響をもたらす」と苦言を呈している。

Surface

これはもともと英Financial Timesのインタビューの中で台湾Acer CEOのJ. T. Wang氏が語ったもので、米Bloombergが追加報道を行っている。Bloombergによれば、Acer広報のHenry Wang氏は「Microsoftはわれわれのパートナーだが、一方で今回の動き(Surfaceの発表)はわれわればかりでなく、すべてのPCメーカーと競合するものだ」と語っている。そして、SurfaceというMicrosoft独自ブランドの製品をリリースすることが、PC業界全体にとってネガティブな状況をもたらすというのが同氏の意見だ。

Surfaceは今年6月に米カリフォルニア州ロサンゼルスでMicrosoftが開催したプライベートイベントで発表された製品。Windows 8/RTの2つのOSを搭載した異なるバージョンの「Surface」が今秋より市場投入されるという。ARM版のWindows RTを搭載したSurfaceはWindows 8発売日である10月26日より全米のMicrosoft Storeにおいて販売が開始されるが、一方のWindows 8を搭載したSurfaceについては同日から90日後の発売となり、パートナー各社に対して一定の配慮をしていることがうかがえる。Surfaceのハードウェア自体はEMSである台湾PegatronがWindows 8/RTの両バージョンともに製造を担当し、これをMicrosoft自身が持つチャネルを通じて販売する形態をとるといわれている。

Acerが指摘するように、Microsoftとパートナー関係にあるPCメーカー各社は一様にSurface登場にショックを受けており、Windowsのエコシステムそのものを崩壊させかねない状況に頭を悩ませている。その理由はいくつかあるが、世界的な不況を受けてPC市場が伸び悩みを見せている一方、iOSやAndroidといったPC以外のモバイルデバイスの興隆もあり、どの程度Microsoftとのパートナー関係やPCに比重を置くのかといったバランスで難しい舵取りを迫られているからだ。

これはAcer自身にもいえることで、同社は昨年2011年に初の赤字を計上しており、景気の冷え込みを受け、今年末リリースが予定されているWindows 8搭載PCについても出荷台数の見積もりをかなり絞っているといわれている。なおIDCのPC Trackerによれば、2012年第2四半期におけるAcerの市場シェアは10.4%で、HP、Lenovo、Dellに次ぐ4位。Dellとのシェア差は僅差であり、HPやLenovoも15%前後のシェアで互いに拮抗した状態にある。