2012年6月、デルは同社製個人向けPCブランド「XPS」と「Inspiron」の2つのシリーズにおいて、それぞれノートPCのラインナップを刷新した。第3世代Intel Coreシリーズの搭載や、Ultrabookなどに代表される薄型ノートPCを展開するなど、2つのシリーズには共通点は多い。スペックなど一見すると、プレミアム向けの「XPS」とメインストリーム向けの「Inspiron」の差がぐっと縮まった印象を受ける。
「XPS」と「Inspiron」。2つのシリーズをデルはどのように位置付けようとしているのか。今回、デル マーケティング統括本部 コンシュマー&SMB製品マーケティング本部 部長 秋島健一氏に各シリーズにおけるラインナップの違いや、今後の同社製PCの展開を聞いた。
「成功する人をサポートするPC」
デル マーケティング統括本部 コンシュマー&SMB製品マーケティング本部 部長 秋島健一氏 |
6月26日に発表されたノートPC「XPS 14」(レビュー記事)と「XPS 15」(レビュー記事)は、指紋やキズが付きにくいアルミベースの筐体を採用し、Edge-to-Edgeのディスプレイの表面をゴリラガラスで覆うことで、バッグの中に入れてもたわまない高い堅牢性を実現している。
従来「XPS」の薄型ノートPCは「z」シリーズとしてラインナップしていたが、2012年3月に発表したUltrabook「XPS 13」も含め、「XPS」シリーズ全体の特長として薄型ボディが採用されることになった。
「XPS」シリーズについて秋島氏は、「成功する人をサポートするPC」と位置付ける。同社のメインユーザーである男性のビジネスパーソンが「持っていることに喜びを感じる」ことを狙いとしているという。そうしたコンセプトを仕様として表現すると、ハイパフォーマンスであることはもちろん、薄くて持ちやすい筐体、バッグの中にいれて持ち歩いても問題ない堅牢性ということになる。
「楽しさを体験するPC」
一方、6月5日にラインナップを一新した「Inspiron」シリーズは、製品名に「R」が付いたメインストリーム向け製品、「z」が付いたUltrabookなどの薄型製品、「Special Edition」が付いたハイパフォーマンス製品という3つのカテゴリーを展開する。
秋島氏は、「Inspiron」シリーズについて、「楽しさを体験するPC」だという。「Inspiron」シリーズでは、スピーカーなどサウンド機能の強化に代表されるように、PCでエンターテインメントを楽しむという部分に力が注がれている。また、豊富な天板のカラーバリエーションを用意するなど、使っていく中で楽しさを感じさせるPCを目指している。
2011年秋モデルの「XPS 15」と「XPS 17」は、マルチメディア機能の高さが特長の製品だったが、今回、「XPS」と「Inspiron」の位置付けが明確化していく中で、それぞれ「Inspiron 15R Special Edition」と「Inspiron 17R Special Edition」という形で新たに「Inspiron」シリーズの仲間入りとなった。
「プレミアム」をどこで示していくか
ノートPCの場合、これまでスペックの違いもさることながら、ボディの薄さや軽さ、デザインといった部分で「プレミアム」な製品だということを示してきた。
しかし、Ultrabookの登場により、エントリーラインの製品でも、持ち運びに適した薄さを持った製品が出てくるようになり、ボディの薄さや軽さという部分ではプレミアム感が出しにくくなってきている。そうした中で、プレミアムラインとエントリーラインの製品の違いをどこで見せていくのか。
秋島氏は「本当の『エントリーライン』は、スペックはそこそこで厚めのボディだけど、価格は抑えられた製品になると思っているので、実際のところはUltrabookによってミドルラインができたと考えることができる」という。そのうえで、「ミッドラインの製品とプレミアムラインの製品の違いは、『そのプロダクトならではのポイント』があるかどうかではないか」と話す。
Ultrabookによって定義された筐体の薄さ、起動の速さ、バッテリ駆動時間といったラインをベースに、その製品にしかない付加価値を持った製品がプレミアムとしてふさわしい製品だという。
例えば「XPS」シリーズでは、Edge-to-Edgeのディスプレイやアルミニウムなどの素材、堅牢性、「Inspiron」シリーズのプレミアムラインである「Special Edition」の場合は、「Skullcandy」のスピーカーやディスクリートのグラフィックスが、エントリーラインやミドルラインの製品との差別化のポイントとなる。
「PCには、CPUやメモリなどのパーツを入れる『箱』という側面がある。ミドルラインの製品は『箱』としては一段上のグレードのもの。プレミアムラインは中身だけではなく、『箱』自体にも価値があるものだと考えている」(秋島氏)。
単純なスペックの優劣による違いだけではなく、素材などでの付加価値を提供することにより、これまでとは違う軸で製品を位置付けられるようになってきたこのタイミングで、各シリーズの位置付けを明確化したという。
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