デスクトップ型のゲーミングPCが欲しいけど、できればコンパクトで静かでおしゃれで、だけどもモンスターハンターワイルズのような高い性能を要求するゲームも快適に遊びたい……そんななかなかにムチャと思える要求に見事応えてくれるのがサイコムの「G-Master Velox Mini」だ。静音と性能のバランスにこだわるサイコムらしさが詰まって1台。今回はその中からIntel最新世代のCPUを搭載する「G-Master Velox Mini B860 Intel Edition」のレビューをお届けしよう。

  • サイコムのコンパクトゲーミングPC「G-Master Velox Mini B860 Intel Edition」。標準構成で226,440円から

    サイコムのコンパクトゲーミングPC「G-Master Velox Mini B860 Intel Edition」。標準構成で226,440円から

高い性能をNoctuaのファンで静かに冷やす

老舗BTOメーカーとして知られるサイコムから、最小クラスのデスクトップ型ゲーミングPCとして発売されたのが「G-Master Velox Mini」だ。同社のタワー型ゲーミングPCであるG-Master Spearに比べて65.4%もサイズを削減したコンパクトなボディがまず大きな特徴と言える。サイズはわずか容量19リットル、幅200×奥行き336×高さ283.5mmとなっている。

小さいだけではなく、天面にはハンドルがあって持ち運びやすく、ホワイトカラーなのでインテリアにも溶け込みやすい。左側面は透明度の高いガラスなので中の様子が見えるのもうれしいところ。カスタマイズとしてLEDストリップを追加できるので、ドレスアップにこだわることも可能だ。なお、PCケースはブラックカラーも用意されている。

  • 左側面は透明度の高いガラスパネルなので中の様子がよく分かる

  • 天面にはハンドルがあるので持ち運びやすい

  • 前面のポートは左側面の下に用意されている。Type-Cポートも搭載

  • 正面。ホワイトカラーのスッキリとしたデザイン。メッシュ構造なので通気性も良好だ

  • 背面側。こちらもホワイトカラーだ

  • 電源ユニットが前面側にあるので、電源コネクタを引き出すためのケーブルが背面側から出ている

さらに、選べるスペックも充実している。「G-Master Velox Mini B860 Intel Edition」では、CPUにCore Ultra 200Sシリーズが並び、標準構成ではCore Ultra 5 225F(Pコア6+Eコア4)だが、最上位のCore Ultra 9 285K(Pコア8+Eコア16)の搭載も可能だ。

ビデオカードも幅広く、標準構成ではGeForce RTX 4060だが、Arc B580やGeForce RTX 5070、Radeon RX 7800 XTなど上位のカードも搭載できる。コンパクトなボディでもかなりのハイエンド構成で注文が可能だ。

静音性にこだわれるのもサイコムらしいところ。PCケースの背面ファンには静音性の高さが知られるNoctua製NH-F12 PWMを標準搭載。CPUクーラーには、Noctua製の空冷クーラーやNoctua製のファンを組み合わせた簡易水冷クーラーも選択できる、

コンパクトなボディでも、高性能で見た目にもこだわれて、静音性も追求できる。小さいから高性能は無理か……、小型で高性能だと冷却力を確保するためにうるさいのは仕方ないか……といった諦めや妥協がまったくいらないのが素晴らしいところと言えよう。

  • CPUにはCore Ultra 200Sシリーズが選択できる

  • CPUクーラーに静音性が高いものを揃えているのも大きな特徴だ

試用機はCore Ultra 7 265KF+GeForce RTX 4070 SUPERの強力タッグ

ここからは実際の性能や静音性、温度などをチェックしていこう。今回の試用機のスペックは以下の通りだ。

■試用機の構成
モデル G-Master Velox Mini B860 Intel Edition
OS Windows 11 Home
CPU Core Ultra 7 265KF(Pコア8+Eコア12)
CPUクーラー Nocuta NH-U12A
マザーボード ASRock B860I WiFi
メモリ 32GB DDR5-5600(16GB×2、デュアルチャネル)
グラフィックス MSI GeForce RTX 4070 SUPER 12G VENTUS 2X OC
SSD Crucial P3 Plus CT1000P3PSSD8(M.2 PCIe Gen4 SSD 1TB)
ケース 白(DeepCool CH160 White)+背面ファン(Noctua NF-F12 PWM)
電源 SilverStone SST-SX700-G(SFX 700W/80PLUS Gold)

CPUはPコア8基、Eコア12基で合計20コア20スレッドの「Core Ultra 7 265KF」だ。末尾に「F」が付いているのでGPU機能を内蔵しないタイプ。最上位のCore Ultra 9 285K(Pコア8基、Eコア16基)に比べ、Eコアが4基少ないだけで、価格はとても下がるためCore Ultra 200Sシリーズで一番お得感のあるモデルと言われるもの。ゲーム用途では十分過ぎるコア数だ。

  • 試用機の内部。コンパクトなボディだが、それほど内部はキツキツではない

  • CPUはPコア8基、Eコア12基のCore Ultra 7 265KFが搭載されていた

ビデオカードは原稿執筆時点ではカスタマイズでは選択できない「MSI GeForce RTX 4070 SUPER 12G VENTUS 2X OC」が搭載されていた。GPUにGeForce RTX 4070 SUPERを搭載するオーバークロックモデルだ。定格のブーストクロックは2,475MHzだが、2,505MHzまで向上させている。

  • ビデオカードにはMSI GeForce RTX 4070 SUPER 12G VENTUS 2X OCが搭載されていた

  • ビデオカードの補助電源コネクタである16ピンには、8ピン×2の変換ケーブルを使用して接続されていた

  • ブーストクロックを定格の2,475MHzから2,505MHzまで向上させたオーバークロックモデルだ

試用機のポイントはCPUクーラーに静音性と冷却性の両方とも高い「Nocuta NH-U12A」が採用されていることだろう。PCケースの背面ファンもNoctuaのNH-F12 PWMということもあって、20コアのCPUとアッパーミドルのGPUをどこまで冷やせて、どこまで静かに運用できるかが気になるところだ。

  • CPUクーラーはNocuta NH-U12A、ケースファンはNoctua NH-F12 PWMという高性能ファンの組み合わせ

超重量級のゲームも最高画質で快適に楽しめるパワー

気になる性能をさっそくチェックしよう。まずは、定番のCPUパワーを測定する「Cinebench 2024」、PCの基本性能を測る「PCMark 10」、3Dベンチマークの「3DMark」を実行する。

  • Cinebench 2024の結果

  • PCMark 10 Standardの結果

  • 3DMark Steel Nomadの結果

  • 3DMark Fire Strikeの結果

  • 3DMark Speed Wayの結果

Cinebench 2024はMulti Core、Single Coreとも非常に高いスコアを出している。Core Ultra 7 265KFの性能をしっかり引き出せていると言ってよいだろう。PCMark 10のスコアもすべて高めで、一般的な作業であれば不満を感じることはないはずだ。3DMarkに関しても、すべてアベレージに近いスコアを出しており、GeForce RTX 4070 SUPERの性能を問題なく発揮できている。

では、実ゲームだとどうだろうか。フル/WQHD/4Kと3種類の解像度で、最高画質と中画質の2パターンでフレームレートを測定した。平均60fpsを超えているかが快適にプレイできる目安と言える。高リフレッシュレートのゲーミング液晶を組み合わせるなら、100fps以上出ているかが注目ポイントと言えるだろう。テストしたゲームと条件は以下の通りだ。基本的にアップスケーラーやフレーム生成に対応しているものは、それぞれ利用している。

  • Apex Legends:最高画質および中画質程度で、射撃練習場の一定コースを移動した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定
  • オーバーウォッチ2:画質“エピック”および“NORMAL”で、botマッチを実行した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定
  • ストリートファイター6:画質“HIGHEST”および“NORMAL”で、CPU同士の対戦を実行した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定
  • エルデンリング:画質“最高”および“中”で、リムグレイブ周辺の一定コースを移動した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定
  • マーベル・ライバルズ:画質“最高”および“中”、DLSS“バランス”、フレーム生成有効で訓練場の一定コースを移動した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定
  • Ghost of Tsushima Director's Cut:画質“非常に高い”および“中間”、DLSS“バランス”、フレーム生成有効で旅人の宿場周辺の一定コースを移動した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定
  • アサシン クリード シャドウズ:画質“最高”&レイトレーシング“全体的に拡散+反射”および画質“中”&レイトレーシング“全体的に拡散”、DLSS“バランス”、フレーム生成有効で、ゲーム内のベンチマーク機能を利用
  • サイバーパンク2077:画質“レイトレーシング:ウルトラ”、DLSS“バランス”、フレーム生成有効で、ゲーム内のベンチマーク機能を利用
  • モンスターハンターワイルズ:画質“ウルトラ”&レイトレーシング“高”および“中”&レイトレーシングOFF、DLSSはプリセットに準拠、フレーム生成有効で、公式ベンチマークを利用
  • 最高画質設定でのゲームベンチマークの結果

  • 中画質設定でのゲームベンチマークの結果

最高画質設定でも多くのゲームが4K解像度でも快適にプレイが可能だ。サイバーパンク2077やモンスターハンターワイルズなど一部の超重量級ゲームでは平均60fps以下になるが、それでもWQHD解像度なら快適に遊べる。ちなみに、ストリートファイター6とエルデンリングは最大60fpsのゲームだ。

中画質まで落とせば今回のゲームならばどれでも4K解像度で快適にプレイが可能だ。サイバーパンク2077とモンスターハンターワイルズも4Kで平均100fpsを超えており、ゲーミング液晶を組み合わせれば滑らかな描画を楽しめる。描画負荷の高いゲームが登場しても安心と言ってよい性能だろう。

小型で高性能だと冷却力や動作音も気になるところ。サイバーパンク2077を10分間プレイした際のCPUとGPU温度をシステム監視アプリの「HWiNFO Pro」で測定した。室温は23℃だ。

  • CPUとGPU温度の推移

CPUは最大75℃、平均で66.2℃、GPUは最大72.5℃、平均69.6℃とまったく心配のいらない温度だ。サイズを考えるとよく冷えていると言ってよい。長時間のゲームプレイも余裕でこなせる。動作音は前面、左側面、背面のそれぞれ10cmの位置に騒音計を設置して測定したが、前面で39.8dB、左側面で39.9dB、背面で41.4dBとなった。空気が抜ける背面側は多少動作音が大きくなるが、それでも全体としてファンの音がほとんど気にならないレベルの静かさだ。NocutaのCPUクーラーとファンによる静音性と冷却性の高さはさすが。

非常に満足度の高い小型ゲーミングPC

性能、見た目、サイズ、静音性、冷却性のどれもハイレベルにまとまっている小型ゲーミングPCだ。重量級ゲームも余裕で遊べる本格派の性能を持ちながらコンパクトで静か。老舗BTOメーカーらしく、CPU、GPU、メモリ、SSD、電源、CPUクーラーとも選択肢が豊富で好みのスペックに仕上げやすいのも大きな強み。高い満足度をもたらしてくれる1台だ。