日本マイクロソフトは20日、豊島区教育委員会、東京大学、レノボ・ジャパンと共同で実施しているICTを活用した実証研究について、東京都豊島区立千川中学校で行われているタブレットPCを利用した授業を公開した。

豊島区立千川中学校 校長 小林豊茂氏

4者が共同で行っている実証研究は、次世代を担う子どもたちの「21世紀型スキル」の育成を目的として、2011年10月からスタート。コミュニケーション能力や情報・情報通信リテラシー、批評的思考、問題解決能力など、子どもたちがこれからの国際社会で活躍するために、身に付けていくべき能力を「21世紀型スキル」と定義して、ICTを活用して「21世紀型スキル」の育成に取り組んでいる。

千川中学校では、Windows 7搭載タブレットPCと教育向けソフトウェア、クラウドサービスを備えたICT環境を構築し、タブレットPCを活用した授業を実施している。

身に付けていくべき能力「21世紀型スキル」

プロジェクト全体のコーディネートやクラウドサービスの提供を日本マイクロソフトが担当し、レノボ・ジャパンが授業で使用するタブレットPC「ThinkPad X220 Tablet」を40台提供。東京大学 山内祐平准教授を中心に授業のカリキュラム作りを行っている。

各社の役割分担

公開授業に先立って行われた会見で、千川中学校 校長 小林豊茂氏は「はじめは教員の方でも『21世紀スキル』という言葉そのものに戸惑うほど、何も分からない中でスタートした。しかし、タブレットPCを使った授業に対して、生徒が目を輝かせながら取り組む姿に触発されて研究を進めてきた。これまでの実践を通してこれからをいきる子どもたちに必要な能力が何かを学ばせてもらっている」と話す。

タブレットPCを使った授業では、これまでなかなか授業についていけなかった子どもや、授業に飽きてしまった子どもが、教員側の想像以上に集中して参加するようになったという。また、アプトプットが苦手な子どももタブレットPCを使うことで、頭の中で考えていることを表現しやすくなっているとしている。

同じく会見でプロジェクトの概略について説明した日本マイクロソフト 業務執行役員 文教ソリューション本部長 中川哲氏は、「この一年弱の間ででいろいろな成果が出てきた」と話し、実証研究の成果として「将来の一人一台環境を見据えた導入・活用のノウハウ」「日常的にICTを活用するための環境の提示」「教育に最適なデバイスの確」の3つを挙げた。

実証実験の成果

また、中川氏は「よい先生とよい授業とよいICTのサポートは、子どもの未来を変える力を持っていると、コンピュータサイエンスに携わる企業として考えている」と話した。

「理科」と「特別活動」に2科目の授業を公開

理科では4人ずつのグループに分かれて、「鉄と硫黄の結びつき」について実験を行い、グループごとに「Microsoft Office OneNote」を使用して実験結果や考察をまとめ発表した。

今日の授業は「鉄と硫黄の結びつき」

鉄と硫黄を化学反応させる

実験の結果をデジタルカメラで撮影

PCで結果をまとめていく

グループで相談しながら考察をまとめる

タブレットモードで画面を覗き込みながら相談

電源にしばられずに利用できるのがノートPCの利点

結果をグループごとに発表

特別活動では尾瀬で行われた、移動教室の様子や写真を「Microsoft PowerPoint」を用いて新聞形式にまとめる作業を行った。

PCを使って移動教室の様子をまとめる

タブレットPCを使った授業は、生徒も高評価。通常の授業よりもタブレットPCを使った授業の方が楽しいと話す。家でのPC利用は、インターネットでニコニコ動画などの動画サイトを見るなどが中心で、「OneNote」や「PowerPoint」などを使って文書作成する機会はあまりないというが、アプリケーションの操作といったPCスキルについても、授業の中で自然と学んでいるという。

実証実験初期は、国語や理科、数学といった授業でタブレットPCを利用してきたが、現在では道徳といった授業でのプレゼンテーションをはじめ、生徒会で作成している生徒会新聞の作成にも活用している。

現在は道徳や生徒会の活動でもタブレットPCを活用している

PCを活用した授業では、PCスキルやITリテラシーの高い生徒が、すべての作業をこなしてしまい、同じグループの生徒も任せきりになってしまうという状況もあるが、「いまのところは、生徒同士の役割分担や代わる代わるの操作ができている」とする。

今後もタブレットPCやICT環境を活用した授業を行うことで、今後に向けた成果を出していく方針だという。

話を聞かせてくれた生徒のみなさん