宇宙航空研究開発機構(JAXA)は6月13日、小惑星探査機「はやぶさ」が持ち帰った小惑星イトカワの試料向けに実施した「第1回 国際AO」に関する選定結果を発表した。

はやぶさが持ち帰った微粒子については、2011年1月より2012年3月まで初期分析が行われてきた。国際AOは、世界の研究者から研究提案を募り、研究成果が期待できる研究者に試料を提供することで、「はやぶさ」プロジェクトの科学的成果の最大化を図ること、ならびに世界の研究者に試料を提供することにより、世界の惑星科学の発展に貢献することを目的に実施され、今回の第1回のほか、来年度、再来年度の合計3回が最低限実施されることが予定されている。

イトカワの微粒子(C) JAXA

今回実施された第1回 国際AOは2012年1月より公募を実施し、同3月に締め切られた。最終的に31件の研究が提案され、その中から17件が選定された(研究提案者の延べ数は日本99名、海外94名の合計193名)。

選定方法としては、提案内容を国内外のレフリー(査読者)に評価を依頼(海外52名、国内14名)、その査読者の評価結果をさらに委員会で審議し、結果として17件(粒子63個)が選定された形となっている。

選定の判断となったのは、「貴重なサンプルなので、はやぶさが持ち帰ったサンプルでしかできないのかどうかを重視した。また、微粒子をハンドルできるかどうかの実績があるかどうかも判断基準の1つとなった」(JAXAはやぶさサンプル国際AO委員会 委員長の藤本正樹氏)という。

JAXAはやぶさサンプル国際AO委員会 委員長の藤本正樹氏(右)と、同じくキュレータの阿部正直氏(左)

提供されるサンプルのサイズは10~100μm程度で、それぞれの研究テーマにあったカタログデータのものが、それぞれの研究者に提供されることとなる。

なお、藤本氏は、「国際AOがはやぶさの活動としては最後の大きな活動になるが、キュレーション活動としては、最初の第一歩となる。アポロ計画で得られたサンプルは40年間保存され、新技術が出てきたときに、新たにそのサンプルが提供されるということが行われている。はやぶさの地球帰還からちょうど2年で、そうした長期的なビジョンを持って、キュレーションを行っていく必要が出てきたことは感慨深い」とコメントしており、今後の研究により、イトカワの起源や、宇宙空間に曝された小惑星表面がどういう状況になるのかといった、惑星がどのようにして誕生するのかなどが見えてくることが期待できるとしている。

第1回国際AOとして選定された17件の代表研究者とその所属、ならびに提案内容