VGXの実行環境は用途によって3種類用意される
VGXを構成する要素は主に2つだ。1つはハードウェアで「VGX Board」と呼ばれ、いわゆるPCIE接続のGPUカードに当たる。Quadroクラスの製品がここで利用される。もう1つは「VGX HyperVisor」で、VMwareやXenといった著名ハイパーバイザ製品にGPUとのインターフェイスを提供するものとなり、このハイパーバイザを介してGPUリソースの仮想化が行われる。このハイパーバイザが仮想マシン(VM)ならびにGPUリソースを管理し、必要に応じてGPUを活用する形態をとる。こうしたGPUリソースの仮想化や管理が可能なのがKepler世代のGPUの特徴というわけだ。
ユーザーは手元のマシンからサーバ上のVMに接続し、VDIを利用する。基調講演のデモにもあったように、クライアントマシンはWindows PCである必要はなく、タブレットやNVIDIA GPU非搭載のWindows以外のマシンまで、好きなデバイスを選択可能だ。Citrix Receiverなど、VDIを利用するためのクライアントソフトウェアさえ動作すれば、その環境は選ばない。またGeForce GRIDとは異なり、VGXはクラウド経由での接続よりもむしろ、イントラネットのような企業内ネットワークでの利用が中心となる。仮にインターネット経由での接続を行うにしても、VPN経由などで利用することになるだろう。
VGXの機能的な特徴の1つは、サーバの処理負担を軽減できる機構にある。例えばVM内での画像データをクライアント側のPC (リモートディスプレイ)で表示する場合、デスクトップの表示データ(ウィンドウやGUI部品などを含む)を一度レンダリングした後、圧縮してクライアント側に送信、そしてクライアント側で展開して再表示する形態をとる。だがレンダリングから画像圧縮、送信までの処理をCPU側ですべて行うのは負担が大きく、これがVDI実現に多大なリソースを要求する原因の1つになっている。前述のように、この処理を一部GPU側に肩代わりさせることで処理負荷を軽減するのもVGXの役割となる。これはGPU自体の処理負荷は低いが、処理の効率化からVDIクライアントの同時接続数の増加に寄与しており、通常のMicrosoft Officeといった業務アプリケーション程度の利用であれば、100台程度の接続は1台のラックサーバで賄えるようになる。写真にもあるようなサーバ1台で実用的には100台程度、最大で250台の同時接続がサポートされる。
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リモートディスプレイ環境への画像転送の仕組み。仮想マシンから画像を転送する際、画像情報を一度システムメモリに展開してH.264エンコードを行うのではなく、GPU内部でNVEncによるエンコード処理を行ってそのまま送信データとする。これがシステム負荷の少ない理由の1つだ |
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VGX BoardとVGX対応ラックサーバの外観。写真はDellのサーバの例だが、PCIEカードのVGX Boardが2枚挿入されているのがわかる。なお、1カードあたり最大で250、実用的には100台までの仮想デスクトップの同時接続が可能だという |
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VGXにおけるVMは、USM (User Selectable Machines)という名称のVMイメージで管理される。これは3種類用意され、業務環境に応じてプリセットされるVMイメージだと思えばいいだろう。例えば「Standard NVIDIA USM」は通常のオフィス業務で利用するもので、比較的処理負担が少ない用途を想定している。「NVS USM」と「Quadro USM」はそれぞれ専門の高速計算やグラフィックス処理といったGPUの潜在能力を必要とするUSMで、NVSやQuadroを使ったワークステーション(PC)と同等の環境が提供されるVMイメージだと思えばいいだろう。
現在VGXにおいては、ハイパーバイザの提供にCitrix (Xen)、VMware、Microsoft (Hyper-V)の3社の名前が挙げられている。Xenの名称もあるが、実質的にはXenSourceを買収したCitrixでの利用が中心であり、同じくXenベースのOracle VMなどの利用は想定していない可能性がある。またハードウェアにはCisco、Dell、IBM、HP、SuperMicroの5つのサーバベンダーの名称が挙げられているが、これとは別にAmazon.comもAWS (Amazon Web Services)でのVGXサポートを表明しており、クラウドベースとしてはAWS経由でVGXを利用することも可能だ。Amazon.comはAWSのEC2でHPC向けインスタンス提供を行っているが、今回さらにVGX向けのインスタンスを提供し、前述3種類のUSMを利用可能だという。ただEC2の利用形態を考えれば、どちらかというとNVSやQuadroのような高負荷タイプのUSMの利用が中心となるだろう。