現在開発中のWindows 8(開発コード名)で、Internet Explorer 10が標準Webブラウザーとして採用されるのは想像に難しくない。だが、従来のデスクトップ/Metroアプリケーション版Internet Explorer 10の切り分けを行うため、新たに起動オプションが設けられているのをご存じだろうか。しかし、同オプションはサードパーティー製Webブラウザー使用時には動作しないため、新たな混乱を招く可能性もある。今週もMicrosoftの各公式ブログに掲載された記事を元に、Windows 8に関する動向をお送りする。

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新設されたInternet Explorer 10の起動オプション

Metroアプリケーション版Mozilla Firefoxのスクリーンショットが開発者のブログで公開されるなど、盛り上がりを見せるWebブラウザー周辺だが、Windows 8の標準WebブラウザーInternet Explorer 10における起動オプションの記事が、IEBlogに掲載されたので、簡単にその内容を紹介する。

あらためて述べるまでもなく、Windows 8は従来のデスクトップとMetroスタイル(のデスクトップ)の二種類が用意されているが、ほかのアプリケーションに用意されたリンクをクリックした際の動作を意識したことがあるだろうか。その答えはインターネットのプロパティダイアログに用意されており、<プログラム>タブに新設させた「リンクの開き方を選択します」で選択可能だという(図01)。

図01 Internet Explorer 10の設定を行う「インターネットのプロパティ」。<プログラム>タブに「リンクの開き方を選択します」が新設された

ドロップダウンリストでは「Internet Explorerで自動的に判断する」「常にInternet Explorerで」「常にデスクトップ上のInternet Explorerで」の三種類から、好みの動作を選択可能。二つめと三つめは文字どおりの内容で前者がMetroアプリケーション版Internet Explorer 10、後者がデスクトップ版のInternet Explorer 10が起動する仕組みである。気になるのは一つめの自動設定だ。

記事ではWindows 8のアクティブ状態を前提に判断すると説明されている。リンク元のアプリケーションがMetroアプリケーションのものであれば、Metroアプリケーション版Internet Explorerを、デスクトップ上のアプリケーションでリンクを開いた場合はデスクトップ版のInternet Explorerが起動するというものだ。

また、ドロップダウンリストの下には<デスクトップでInternet Explorerタイルを開く>という項目が用意された。こちらはMetroデスクトップに貼り付けられたタイルをクリックした際の動作を左右するもので、初期状態の未チェックの場合は、そのままMetroアプリケーション版Internet Explorer 10が起動するが、チェックを入れた状態ではデスクトップ版Internet Explorer 10が起動する(図02)。

図02 <デスクトップでInternet Explorerタイルを開く>の動作

このようにWindows 8では、Metroデスクトップを活用したInternet Explorer 10が提供される予定だが、Adobe Flashなどのアドオンを必要とするWebページを正しく表示できないので注意が必要だ。Windows 8自体にAdobe Flash Playerをインストールすることは可能だが、Metroアプリケーション版Internet Explorer 10上で動作しないため、デスクトップ版Internet Explorer 10の併用が欠かせない(図03~04)。

図03 デスクトップ版Internet Explorer 10では、正しくAdobe Flashのバージョン情報が表示される

図04 Metroアプリケーション版Internet Explorer 10は、Adobe Flashが動作しないため、バージョン情報を確認できない

図05 Metroアプリケーション版Internet Explorer 10には、デスクトップ版に切り替えるための機能が用意されている

このロジックはMicrosoft謹製の「Microsoft Silverlight」でも同様。以前のレポート記事でも述べたように、あくまでもMetroアプリケーション版Internet Explorer 10はコンシューマー向けであり、手軽にWebブラウズするためのアイテム。きめ細かい設定や仕事などでWebブラウジングを行う際は、デスクトップ版Internet Explorer 10を使用することを想定しているようだ(図05~06)。

図06 Metroアプリケーション版Internet Explorer 10の設定画面には、アドオンに関する設定項目は用意されていない

一昔前はYouTubeなどの動画サイト閲覧に欠かせないAdobe Flashだったが、現在はHTML5への移行も進みつつ現状を踏まえると、Webブラウジングにアドオンが必須とは言いがたい。それだけにMetroアプリケーション版Internet Explorer 10は、セキュリティ管理などを必要とするアドオンの排除に徹したのだろう。

筆者自身もこの切り分けに異論はないものの、これまでコンピューターを使い続けてきたユーザーにとって、Metroアプリケーション版Internet Explorer 10における機能制限は違和感を覚えるのではないだろうか。その回答が前述の「リンクの開き方を選択します」という設定項目だ。きめ細かい設定を求めるユーザーは、デスクトップ版Internet Explorer 10を起動する設定に変更すればよい。

ただし同項目は、Internet Explorer 10が標準Webブラウザーのときのみ動作し、サードパーティー製Webブラウザーが既定になっている場合、変更できなくなってしまう(図07)。

図07 既定のWebブラウザーを変更すると「リンクの開き方を選択します」が試用できなくなる

この点がサードパーティー製Webブラウザーの登場で混乱を招く原因となる可能性が高い。例えばMetroアプリケーション版Mozilla Firefoxを既定のWebブラウザーとして選択したとしよう。その際、リンクの開き方を制御するオプションが用意されていないと、異なり使用スタイルになってしまうため、エントリユーザーであればあるほど混乱を招いてしまうのではないだろうか。Metroアプリケーション版Mozilla Firefoxは、2012年第二四半期を目標に開発が進められているので、開発陣も何らかの対応を行ってくるだろう。いずれにせよサードパーティー製Metroアプリケーションが登場してから再検証し、本レポートでご報告する。

阿久津良和(Cactus