3月24日、東京大学 本郷キャンパスで日本最大級のAndroidイベント「Android Bazaar and Conference 2012 Spring」が開催された。主催は、「日本Androidの会」。携帯キャリアや携帯メーカー、Android開発者など、さまざまな関係者による講演と展示が行われた。本稿では、日本Androidの会 会長の丸山不二夫氏による基調講演の模様を紹介する。

クラウドとクラウドデバイスのインパクト

講演する日本Androidの会 会長・丸山不二夫氏

丸山氏の講演タイトルは「変貌するWebの世界 クラウドとクラウドデバイスのインパクト」。スマートフォンやタブレットという「クラウドデバイス」の普及や、それがもたらすWebや人々の生活の変化など、Androidだけにとどまらない洞察に富んだ内容となった。

講演の冒頭で丸山氏は、21世紀に入ってからの約10年におけるITの世界の変化について振り返った。21世紀の最初の10年で携帯電話が爆発的に普及し、現在では世界人口の80%が携帯電話を持っており、インターネットの利用率である30%を大きく引き離していることを指摘。2006年以降にはAmazon、Google、Microsoftなどによりインターネットクラウドが登場し、続いて、それらのクラウドを利用するiPhone、Androidといった「クラウドデバイス」が躍進したと解説。さらに、Android、iPhone、iPadなどのクラウドデバイスの拡大は急速であり、それぞれ単独の出荷台数がPCを上回る勢いであると述べた。

スマートフォンの普及状況については、アメリカではスマートフォンがすべての携帯電話の30%を占めるようになり、2012年には40%を超えるだろうと予測。しかし、日本のスマートフォンの普及率は、各種調査で低迷しており、先進国はもちろん、アジアでも最低クラスになっていると紹介した。

世界人口における携帯電話とインターネットの利用率。携帯電話がインターネットを大きく引き離している

Android、iPhoneなどのクラウドデバイスの出荷台数がPCを上回る勢い

日本ではスマートフォンの普及率が低迷している

今日のITを牽引する「ギャング・オブ・フォー」

続いて丸山氏は、昨年2011年のクラウドとクラウドデバイスにまつわる出来事について、「ギャング・オブ・フォー(Gang of Four)」の動きを中心に振り返った。ギャング・オブ・フォーとは、Google、Apple、Facebook、Amazonの4社のことであり、今日のITを牽引する存在であるとした。

6月にAppleがiOS端末で利用できるクラウドの「iCloud」を開始し、11月にはAmazonがAndroidを搭載したタブレット「Kindle Fire」を発売。加えて、Facebookがクラウド・データセンターを開始したことなどを取り上げ、4社がそれぞれ独自のクラウドとクラウドデバイス、マーケットを持ち始めたことを指摘。また、Microsoftについては、ギャング・オブ・フォーについて行こうとしており、5月に買収したSkypeは、今後同社の武器になるだろうと述べた。

Amazonは2011年11月にタブレット「Kindle Fire」を発売

Google、Apple、Amazonなどは、独自のクラウドとクラウドデバイスを持ち始めている

Skypeを買収したMicrosoftは、ギャング・オブ・フォーについて行こうとしている、と丸山氏

クラウドデバイス急増により頻発する通信障害

丸山氏は、クラウドデバイスの急増による弊害として、ネットワークトラフィックの増大により通信障害が頻発していることに言及。日本において、2011年から2012年の初めにかけて携帯キャリアで通信障害が頻発した事例を取り上げた。2012年1月25日に発生したNTTドコモの通信障害では、パケット交換機を同時接続数の多いものに変えたものの、制御信号の処理能力が以前より低くなっていたために、処理能力をオーバーして障害が発生したと説明した。

スマートフォンはPCの約10倍の制御信号を発しており、電池の持ちを良くするために採用されている「Fast Dormancy」が制御信号多発の原因であると、丸山氏は指摘。Fast Dormancyは端末を休眠状態にすばやく切り替える機能で、スマートフォンは端末がアクティブな状態である時間をできるだけ少なくしようと設計されており、見かけ上、ネットに常時接続されているようであっても、実際にはFast Dormancyにより、切断と再接続が繰り返されている。