コンピューターに対する入力インターフェースは、パンチカードやスイッチという時代もありつつも、最初のデバイスは19世紀に生まれたタイプライターを先祖に持つキーボードや、1960年代にはDouglas Engelbart(ダグラス・エンゲルバート)氏が発明したマウスの存在が大きい。ジェスチャーや音声認識による直感的なインターフェースになる可能性を持つKinect for Windowsの存在も興味深いが、このような既存デバイスを活かした新しいアプローチは、近未来を感じさせる。

同じOLEDを活用した研究結果としては「Seeing Displays」も取り上げたい。言葉にすると"ディスプレイを視覚化する"という変な日本語になってしまうが、内容はフラットレンズと半透明のOLEDを重ね合わせることで、ジェスチャーによる操作がディスプレイに描かれるというものだ。動画ではディスプレイをなでるとデスクトップに並ぶ付箋が風に揺れるようになびき、ペンでデスクトップをなぞると炎の効果が描かれている(図16~17)。

図16 フラットレンズによるリアルタムスキャンを視覚化した状態。さまざまな角度から測定されている(画像は動画より抜 粋)

図17 ペンでディスプレイをなぞると炎が描かれるデモシーン。動画で見るとかなり楽しそうだ(画像は動画より)

面白いのが付箋の内容をディスプレイに貼り付けるデモシーン。Seeing Displaysのフラットレンズはスキャナーの役割を備えているらしく、手書きの付箋をそのまま画像としてディスプレイに貼り付けるというものだ。ロジック自体はそれほど難しいものではないが、簡単な操作で物理的なアイテムが仮想的なアイテムに変換されるシーンを目にすると、Seeing Displaysの可能性をいろいろと想像してしまうのは筆者だけはないだろう(図18~20)。

図18 プレゼンターであるSteven Bathiche氏が取り出した付箋には、適当な文書が書かれている(画像は動画より)

図19 先ほどの付箋をディスプレイに貼り付けている。測定用のコンピューターのデスクトップ(画面右側)に文字が映し出さ れている点に注目(画像は動画より)

図20 先ほどの付箋がデスクトップに貼り付けられている。センサーによるスキャン機能の一例だ(画像は動画より)

このような視覚的な拡張を行うと同時にコミュニケーションの面に注目した研究が「IllumiShare」。物理的に離れた相手同士が同一のホワイトボードにメモや数字を書き込むことを可能にする本プロジェクトは、カメラを用いてそこに描かれたものをリアルタイムで共有するというもの。文字や数字がリアルタイムで反映されるため、相手が横にいなくとも互いに情報を共有できると同時に、カードゲームをプレイすることも可能だという(図21~22)。

図21 プレゼンターであるSasa Junuzovic氏と相手が並んでいる。注目は頭部にあるカメラと卓上で光る領域。これが 「IllumiShare」だ(画像は動画より)

図22 共有領域ではリアルタイムで共有されるため、ペンで書いた数字やカードゲームが互いに映し出される(画像は動画より )

このほかにも興味深い研究結果が披露されており、「Craig Mundie on the Future of Computing」で画像や記事を確認することができる。また、動画はYoutubeのMicrosoft Research公式チャンネルをチェックした方が早いだろう。決して遠くない未来のコンピューター環境を作り出すための基礎研究結果は、多くのユーザーに新しい未来像を見せてくれるはずだ。興味のある方は是非ご覧いただきたい。

阿久津良和(Cactus