日本マイクロソフトと日本デジタルオフィスは、Microsoftのクラウド基盤「Windows Azure」を使った電子書籍サービスで協業し、出版社などに向けてサービスを提供する。第1弾として、ぴあの電子書籍「ぴあ+<plus>」を12月16日より配信する。同サービスは、HTML5を採用し、PCやスマートフォン、タブレット端末から同じコンテンツにアクセスできるのが特徴。

電子雑誌のぴあ+。映画情報を提供し、ブラウザだけで閲覧できる

ぴあ+は、日本デジタルオフィスのクラウドサービス「DO!BOOK[SV]」を採用した電子雑誌。エンターテインメント雑誌の老舗「ぴあ」は39年の歴史を閉じたが、休刊後すぐに電子版の復活を模索しており、単なる復刊ではなく、「一歩進んで、Webの新しいサービスとして立ち上げたい」(ぴあ・メディア局映画グループ岡政人氏)として、今回の電子雑誌を作り上げた。

ぴあが採用したDO!BOOKは、PDFファイルをアップロードするだけで、HTML5形式の電子書籍コンテンツを生成できるというもの。Azureプラットフォームを採用することで、特別なインフラを構築する必要がなく、短期間でサービスを提供できるなどが特徴だ。HTML5を採用するため、PC、iPhone/iPad、Android、Windows Phoneといったさまざまなデバイスで閲覧でき、1つのPDFファイルから、自動的に全デバイス対応を実現できる。

ぴあの岡政人氏

DO!BOOK [SV]は、自動的にPDFデータをHTML5に変換し、マルチデバイスで閲覧できるようにする。詳細なログも取得可能

読者側は、HTML5対応ブラウザさえあれば、特別なアプリをインストールしたり、書籍をダウンロードしたりする必要はない。Webサイトにアクセスすれば、書棚のデザインから書籍を選び、そのまますぐに閲覧が可能になる。携帯電話の3G回線化でも高速に閲覧できるような工夫も盛り込んだという。

さまざまなデバイスで動作しているところ。Windows Phone、Kindle Fire、Android、iOSの各デバイスでそれぞれ動作している

発行側では、あらかじめオーサリングツールで作成しておいたPDFファイルを指定するだけでよく、管理画面でページの入れ替えや発行日などを指定するだけで変換からアップロード、発行までできる「完全に自動化された」(日本デジタルオフィス浜田潔・代表取締役)ことがメリットだ。

コンテンツの生成画面。変換したあとは、アップロードするページの順番を入れ替えたり、タイトルを変更したりといった修正も可能

発行後は、SQL Azureに詳細な閲覧ログが保存され、発行側が確認できる。ログでは個人情報は取得していないが、読者がどのページを、どの解像度で、どの程度拡大して、どのように閲覧したか、といった読者の動きを詳細に分析できる。

閲覧ログ。ヒートマップのように、よく見られるページの部分が分かる

このDO!BOOKを採用したぴあ+は、ぴあのコンテンツのうち、映画の情報を提供。雑誌では、カレンダー形式で映画館やライブハウスなどのスケジュールを一覧表示していたが、この掲載方法は「具体的な目的がなく、何か映画を探したい」などに便利で評判がよかった。よって、ぴあ+では、「雑誌をパラパラとめくりながら、目にとまった映画を調べる」という探し方を再現しているという。

休刊した雑誌ぴあのうち、特に要望が強かったカレンダー形式の映画情報などを提供

本棚形式のデザインで「BOOK」を選んでいく。特別号は第1弾として「マイウェイ」を紹介する冊子を提供。紙媒体で60万部を配布しているが、同内容を電子雑誌でも提供する

書棚には「BOOK」という形でコンテンツがまとめられ、「今週の映画情報」は通常号として毎週刊行され、さらに特別号や増刊号、PR冊子なども配信する。最近はシネマコンプレックスなどで、前週の上映状況を見て翌週のスケジュールを決めており、従来の雑誌では対応しきれなかった。今回の電子雑誌では、前日までのスケジュールを踏まえて、翌日の通常号を発行でき、タイムリーな情報を提供できるという。

カレンダー形式の映画情報では、クリックするとWebサイト上の詳細情報にアクセスできる。各ページからTwitterやFacebookに投稿もでき、ぴあ+のコンテンツを拡散できるようにしている。Twitter連動機能では、例えば雑誌の「はみ出し」投稿のように、ネタの投稿や感想の募集などを行い、それをまとめた電子書籍の発行も考えているそうだ。また、イベント上映のように、通常では掲載されないような情報でも、Twitter経由で自主上映やライブハウスでのベント情報を投稿することで、ぴあ+に掲載される、といったことも検討しているとのこと。

SNSへの投稿機能も搭載。投稿のログも確認できる

今後、SNSと連動した機能なども提供していく

同時に、スタジオジブリ初めての電子メディアだという「電子ジブリぴあ」も発行する。ジブリ自体が力を入れており、ぴあ+内に埋もれさせるのは「もったいない」(岡氏)ということで、別雑誌として提供される。

電子ジブリぴあ

PDFから変換されたコンテンツは、Azureストレージに保存される。AzureストレージはWebサーバーとしての機能も備えているが、日本デジタルオフィスは工夫を加えて「大量のアクセスをストレージサーバーだけでさばく器用なことをしている」(マイクロソフト業務執行役員・平野和順氏)という。これによって容量1GBで15円に満たない価格でサービスを利用でき、平野氏は「Azureの売上的には厳しいが、うまい使い方で、ベストプラクティスとして誇れる事例」(同)と話す。

日本デジタルオフィスの浜田潔氏

日本マイクロソフトの平野和順氏

今回のDO!BOOKサービスは、主に電子雑誌をターゲットに、利用料は年間30万円をキャンペーン期間中は同20万円で提供。3,000ページまでアップロード可能で、それ以降は追加料金がかかる。ログサービスも含めれると、同50万(キャンペーン40万)円で提供する。電子雑誌だけでなく、企業向けのカタログなどの配布などもカバーしたい考えだ。

2012年1月には、Facebookページへ組み込めるモジュールをリリースする。さらに3月には決済システム連携モジュールも提供し、コンテンツ販売も対応する予定だ。ほかの電子書籍プラットフォームのように1冊販売ごとの手数料などはかからず、発行者側は年間利用料のみで販売が可能だ。

今後Facebookページ組み込み、決済機能を提供していく

日本デジタルオフィスでは、今後1年間で500社の採用を目指す。日本デジタルオフィスは米国法人も立ち上げており、国内外あわせて、今後3年間では1万社の顧客を獲得したい考えだ。浜田氏は、サービス利用料だけでなく、ログを販売することで収益化を目指す意向で、例えばぴあ+の読者動向を映画配給会社に販売する、といった方向性を考えているそうだ。

(提供:AndroWire編集部)

関連記事

MSと日本交通が発表会 - 新サービス「全国タクシー配車」について説明 (2011年12月13日)