トレンドマイクロは、2011年10月度のインターネット脅威マンスリーレポートを発表した。

10月のインターネット脅威状況

すでに報道されており、ご存じの方も多いと思うが、10月には、政府関連や軍事関連の企業を標的とした標的型攻撃があった。多くの手口は、不正プログラムを添付したメールを送付し、バックドア型の不正プログラムに感染させる。その後、攻撃者が外部から侵入し、個人情報や機密情報など目的の情報を奪取したとされる。トレンドマイクロによれば、継続的に攻撃が行われる「持続的標的型攻撃」は、事前に攻撃対象を調査することや、セキュリティ対策ソフトで検出されないことを確認してからメールを送付するなど、攻撃の手口が巧妙になっているとのことだ。

2011年4月から10月までに日本国内で収集した標的型攻撃メールをトレンドマイクロで分析したところ、半数が脆弱性を悪用していたとのことだ。添付ファイルでは、PDF(Adobe Reader)、DOC(Microsoft Word)、XLS(Microsoft Excel)、HLP(help)、JTD(一太郎)で脆弱性が悪用されていた。注目すべきは、JTD(一太郎)のように、主に日本国内で利用されるアプリケーションを対象にしたものも確認された点である。攻撃者は、メールの文面だけでなく、脆弱性も日本国内など攻撃先に特有のものを利用している。対策として、速やかに脆弱性を解消することがあげられる。

図1 標的型メールに添付された不正プログラムのファイル形式(レポートより、EXE、SCRはZIPやRARなどの圧縮形式で圧縮されたものも含む)

企業・団体のシステム管理者には、不正プログラム対策や脆弱性対策など、サイバー攻撃を未然に防ぐ「入口対策」はもちろんであるが、万が一侵入された場合を想定し、侵入されたことを速やかに検知し、不正プログラムによる情報漏洩を防ぐといった「出口対策」も重要と指摘する。また、10月はAndroid端末に感染する不正プログラムが急増した。2010年12月末から2011年9月末までの累計数が243種に対して、2011年10月の1か月間で290種類の不正プログラムを新たに確認された。スマートフォンにもセキュリティ対策ソフトが不可欠になりつつある。

図2 Android端末に感染する不正プログラムを検出するパターンファイル数:2010年12月末~2011年10月末(累計)

国内で収集・集計されたランキング

1位は、今月も「WORM_DOWNAD.AD(ダウンアド)」となった。2位に圏外からランクインしたのが、アドウェアの「ADW_EOREZO(ヨレゾ)」である。日本では、出会い系やゲーム関連などの広告を表示する。感染経路は、他の不正プログラムから作成される、悪意あるWebサイトからユーザーが誤ってダウンロードする、などである。セキュリティ対策ソフトで、きちんと防ぎたい。

表1 不正プログラム検出数ランキング(日本国内[2011年10月度])

順位 検出名 通称 種別 検出数 先月順位
1位 WORM_DOWNAD.AD ダウンアド ワーム 13,326台 1位
2位 ADW_EOREZO ヨレゾ アドウェア 7,615台 圏外
3位 CRCK_KEYGEN キーゲン クラッキングツール 2,869台 4位
4位 ADW_YABECTOR.SM ワイエイベクター アドウェア 2,045台 2位
5位 Mal_Opet-3 オペット その他 1,348台 8位
6位 WORM_ANTINNY.AI アンティニー ワーム 1,213台 6位
7位 PE_PARITE.A パリット ファイル感染型 1,151台 7位
8位 WORM_ANTINNY.JB アンティニー ワーム 1,016台 9位
9位 WORM_ANTINNY.F アンティニー ワーム 955台 10位
10位 TROJ_AGENT.IENP エージェント トロイの木馬 926台 圏外

世界で収集・集計されたランキング

全世界のランキングでも、日本国内と同様に「ADW_EOREZO(ヨレゾ)」が上位にランクインした。1位は「WORM_DOWNAD.AD(ダウンアド)」となり、検出数は2位の約4倍となった。依然として、猛威を振るっている。

順位 検出名 通称 種別 検出数 先月順位
1位 WORM_DOWNAD.AD ダウンアド ワーム 128,778台 1位
2位 CRCK_KEYGEN キーゲン クラッキングツール 34,949台 2位
3位/th> ADW_EOREZO ヨレゾ アドウェア 25,585台 圏外
4位 PE_SALITY.RL サリティ ファイル感染型 18,235台 3位
5位 Mal_OtorunN オートラン その他 16,309台 4位
6位 HKTL_USURF ユーサーフ ハッキングツール 12,435台 圏外
7位 Mal_Opet-3 オペット その他 11,178台 圏外
8位 HKTL_KEYGEN キーゲン ハッキングツール 10,801台 5位
9位 WORM_FLYSTUDI.B フライスタディ ワーム 10,554台 8位
10位 PE_SALITY.RL-O サリティ ファイル感染型 10,042台 10位

表2 不正プログラム検出数ランキング(全世界[2011年10月度])

順位 検出名 通称 種別 件数 先月順位
1位 WORM_DOWNAD ダウンアド ワーム 22件 1位
2位 TROJ_FAKEAV フェイクエイブイ トロイの木馬 7件 圏外
3位 BKDR_AGENT エージェント バックドア 6件 圏外
3位 HTML_HTAPORN エイチティーエーポルン その他 6件 圏外
3位 TROJ_DLOADER ディーローダー トロイの木馬 6件 5位

迷惑メールの対処方法

トレンドマイクロでは、インターネット・セキュリティ・ナレッジというセキュリティポータルサイトを公開している。このサイトでは、セキュリティの関する知識や情報を初心者にもやさしく解説する。今回紹介したいのは、迷惑(スパム)メールの対処方法である。

図3 インターネット・セキュリティ・ナレッジの迷惑メールの対処方法

メールを使っていると、ほとんどの方が迷惑メールを受け取った経験があるかと思う。単なる広告のようなものから、アダルト系、ギャンブルなどさまざまな迷惑メールがある。広告のように、宣伝だけならば、さほど被害も大きくはない。しかし、迷惑メールこそ、攻撃者にとって、悪事の第一歩なのである。個人情報の奪取、さらには、ウイルス感染といった直接的な被害に繋がる危険性もある。対処法では、

  • 迷惑メールをなるべく受け取らないための方法
  • 迷惑メールを受け取ってしまった場合
  • 逆に自分の送るメールが迷惑メールと間違われない方法

などを紹介している。繰り返すが、迷惑メールは悪意を持った攻撃者の最初の攻撃ともいえる。まだ迷惑メールを受け取っていないという方も、届き始めてからでは遅い。ぜひ、事前の対策などを行ってほしい。