全米第3位の携帯キャリアSprint Nextelが、10月4日(現地時間)にも米Appleより発表される新型iPhoneの取り扱いを開始することになるという。SprintはCDMA系キャリアで、同じCDMA系のVerizon Wirelessは今年2月よりiPhone 4の取り扱いを開始し、同国におけるAT&TのiPhone独占販売体制を崩している。一方でSprintはAppleとの契約に際し、2014年までの4年で少なくとも3050万台、金額にして200億ドルの販売コミッションを結んだという。いる米Wall Street Journalが10月3日(現地時間)に報じて。
今回の話題のポイントの1つは、AppleがiPhoneを取り扱うキャリアに対して要求しているコミッションの具体的な数値が出てきた点にある。2007年に初めて米国でiPhoneの販売が開始されたとき、この商品の取り扱いはAT&Tの独占契約だった。後のiPhone 3G以降はルールが緩和され、1国1キャリアの縛りは取り払われた。その代わり、iPhoneを取り扱う事業者に対しAppleは「最低限の売上保証」を行うコミッションの要求を行っているといわれる。具体的な金額や台数は不明だが、現在iPhoneを取り扱っている事業者のほとんどが、Appleから要求された何らかの条件を呑んでいるものとみられる。今回WSJが出した具体的な数字は、関係者からのコメントによるものだという。
このコミッションがSprintにとってどの程度の重みとなるのか、簡単に数字で比較してみよう。WSJが引用しているCredit Swissがまとめた集計によれば、現在Sprintの契約者数は約3200万人で、7000万人超のAT&Tや8000万人超のVerizon Wirelessと比較して、半分以下の水準となっている。この差はスマートフォンが全盛となった2007年以降どんどん離れており、コミッションに承諾してまでSprintが巻き返しを図っている理由の1つとなる。だが現在の契約者数と今後4年のiPhone累計販売台数がほぼ同数であり、これを実現するのはSprintにとってかなりの掛けといえるだろう。米国の総人口が約3億人であり、携帯普及シェアが100%になったと換算して、その1割にあたる数のiPhoneを捌かなければならないからだ。
これを米国外のケースに当てはめれば、同様のコミッションが海外のキャリアにも要求されていることが容易に想像つく。もっとも、Sprintと同等の水準ではないだろう。米国では潜在顧客を含めて携帯電話では3億人市場が見込めるが、より人口が少ない国や携帯普及率の少ない国では、コミッションの水準が低く抑えられるものとみられる。また今回のSprintのようにシェア十数%程度のキャリアと5割近いシェアのキャリアでは販売力や、移行が見込める既存顧客のベースが異なるため、ある程度状況をみて補正が行われると考えられる。すると、コミッションの数字は国やキャリアによってAppleが微調整を行い、市場規模が大きく、市場シェアの大きいキャリアほど水準が引き上げられる可能性があるのではないかと筆者は推測する。日本では現在ソフトバンクモバイルのみがiPhoneを扱っているが、Sprintとは異なるコミッションが提示されている可能性が高い。一方でNTTドコモがiPhoneを扱おうと考えた場合、おそらくソフトバンクモバイルよりはるかに高い水準のコミッションが提示される可能性があると筆者は考えている。auのKDDIも、市場シェアからみてソフトバンクモバイルよりも不利な条件が提示されている可能性があるが、もし同社の追い上げスピードに脅威を感じた場合、あえて不利な条件を受け入れて勝負に臨むことになるだろう。