インテルは9月26日、定例記者会見であるIAプレスミーティングを開催した。先日サンフランシスコで開催されたIntel Developper Forumn 2011 San Franciscoの内容から、代表取締役社長である吉田和正氏、IA技術本部アプリケーション・スペシャリスト 羽切崇氏がハイライトを紹介した。
まずは最新技術に基づく将来ビジョンを代表取締役社長である吉田和正氏が紹介し、技術面の詳細解説をIA技術本部アプリケーション・スペシャリスト 羽切崇氏が行った。そしてその内容の大半を占めたのは、間もなく市場投入される新しいノートブックPCカテゴリである「Ultrabook」に関するものだった。
今求められているのは協業力
吉田和正氏がIDF 2011 San Franciscoのハイライトとして紹介したのは3点。ひとつ目はグーグルとの協力、2つ目はUltrabookのビジョン実現に向けて、3つ目はニア・スレッシュホールド・ボルテージ・コアという内容だ。
グーグルとの協力に関しては、その背景にPC以外の関連市場の急速な拡大を挙げた。スマートフォンやタブレットなどのスマートデバイスが普及し、それらがインターネットを通じクラウドで繋がる時代に向け、この分野でもイノベーションを進めていくことを力強く示したものであるという。ただし、「Intelは半導体技術の会社である」との姿勢を示し、グーグルとの協力に関しては、Intelのハードウェア・プラットフォームの上での"サービス"を置いていくか、ということとしている。
コンピューティング環境の進化として、多岐に渡る利用方法、スマートデバイスの広がり、クラウドを挙げた。とくにスマートデバイスという非PC関連製品が急速に立ち上がりがっている現在、そのサービス面の強化としてグーグルと協力したと説明している |
IDF 2011 San Franciscoでは、次世代AtomとされるMedifieldをベースにグーグルとの協力したリファレンスデザインが紹介された。ただし、具体的な製品については「さらに次のプラットフォームということもある」と慎重な面を示したうえで、「具体的な例はまだ示せないが強力に展開していく」と重ねて強調している。
Ultrabookは、そのコンセプトがCOMPUTEX TAIPEI 2011で発表されたものである。スライドで「モバイルを超えて」と題されたように、デザイン的な特徴として、より薄く軽く、スタイリッシュで、性能面でもより強力でレスポンスタイムが短く、強固なセキュリティ機能やコネクティビティを挙げた。まずロードマップが示されたが、これによると第1世代は現在の第2世代インテル・Coreプロセッサー・ファミリー、つまりSandy Bridgeをベースとして2011年内に登場する予定だ。そして2012年にはこれが22nmプロセスの第3世代インテル・Coreプロセッサー・ファミリーであるコードネームIvy Bridgeに進化する。そこにはより薄く、よりレスポンスが早く、よりセキュアであるという特徴が示された。そして2013年にはコードネーム「Haswell」と示され、ノートブックPCを新たな世界へ、と進化させると約束している。
なお、Ultrabookはノートブックの新しいカテゴリであり、その普及のために重要なこととして、価格という課題もあげている。この点について吉田氏は「広がる価格帯で実現する」としている。これまでのスリムノートと比べても戦略的な価格帯で登場することを予感させる言葉だ。また、「前の体験とはひとつ違うな」というのを提案したい、としている。Ultrabookを実現するためのIvy Bridge、Haswellのテクノロジ・ハイライトとしては、Ivy Bridgeでは22nmの3Dトランジスタ技術、そしてHaswellでは様々なパワーマネジメント機能とトランジスタとのもののイノベーションによる省電力化によって、2011年比で20分の1以下という電力面での目標を示した。
Ivy BridgeとHaswellの技術的ハイライト。Haswellでは消費電力で20分の1を目標に掲げる。IDF 2011 San Franciscoで紹介したソーラー発電で駆動するニア・スレッシュホールド・ボルテージ・コアはあくまで技術デモだが、低消費電力化に向けて様々なアプローチをとる |
また、最後にこれからの世界で必要なこととして、「協調力・協業力」を掲げた。Intel 1社だけでできることには限りがあり、ひとつの業界だけでできることは多いがそれでもやはり限界があると言い、縦割りだけでない横への協調・協業がこれからは必要になってくると説明した。PCだけでない、スマートデバイスの世界を意識したもの、あるいはコンティニュアのようにPCの可能性がビジネス以外にも広がることを意識した発言と思われる。「新しい活用の創出にも取り組む」とIntel自身が新たなITの活用シーンに積極的に関与していく姿勢を示している。
Ultrabookを実現する具体的な技術を説明
羽切崇氏はUltrabookの技術的な側面を紹介した。まず最初はIvy Bridgeのテクノロジ。Ivy Bridgeは既に説明されているとおり、22nmプロセスが採用されるほか、基本的にSandy Bridgeと同様のモジュラー構造を採用しており、リング・インターコネクトを通じてLast Level Cache(LLC)を共有する。また、Sandy Bridgeとのバックワード・コンパチブル・ソケットであると説明している。これは、Ivy Bridge世代のプラットフォーム上でSandy Bridgeも動くという意味だ。また、Ivy Bridgeはチック・タック・モデルにおけるチックに相当するが、グラフィック関連では大幅に強化されると説明した。具体的にはDirectX 11のサポートが挙げられている。そのほかセキュリティ関連では、Digital Random Number Generatorという乱数発生器が搭載されるほかSupervisory Mode Execution Protection(SMEP)という悪意のあるソフトウェアが特権モードを昇格させてセキュリティアタックをするケースを防止するためのセキュリティ機能とされる。また、メモリではDDR3Lのサポートが追加されるほか、ディスプレイ出力では3画面出力がサポートされるという。
Ultrabookのパフォーマンスと消費電力のバランスをとる技術としてコンフィグラブルTDPも紹介した。コンフィグラブルTDPは、従来までのノーマルなTDPに対し、TDP UpとTDP Downという2つのモードを追加したものと説明する。ファンをガンガン回しても良いから性能を出したい時にはTDP Upとして17W、静音モードの時にはTDP Downで10Wというように使い分けができる。こうしたTDPの変更が動作中に動的に変更可能という。また、そもそもTDP Downに固定して薄く軽いPCを設計することも可能とし、メーカーによる設計面での自由度を上げるというメリットも説明した。
また、コンフィグラブルTDPのシミュレーションも示している。2つのグラフが示されたが、ひとつはCPU負荷が激しく可変するSYSmark 2007、もうひとつは一定の高負荷が継続するCinebenchの消費電力グラフだ。SYSmarkはCPU負荷が上下するため、消費電力のグラフも大きく上下する。そのためTDP 17WのラインとTDP 13Wのラインは重なり、そのことからTDP 13Wの枠を使い切っていないと指摘する。一方でCinebenchは一定の負荷が継続するためにTDP枠に先に達した13Wのラインは途中でクロック調整が入り消費電力も大きく引き下げられる。一方でTDP 17Wのラインはその間にも消費電力が17Wの上限を目指して上昇を続けている。この差がきょう体の薄さやバッテリーライフに影響してくると説明している。
もうひとつ消費電力を抑える技術としてディスプレイにおけるPanel Self Refresh(PSR)も説明した。これは画面の書き換えがおきない際に、メモリやグラフィックチップへのアクセスを停止し、ディスプレイ自身がリフレッシュ制御を行うことで消費電力を抑えようという技術だ。画面の書き換えの少ないアプリケーションとしては、テキスト編集やウェブブラウジング、アイドル状態などを挙げた。
PSRでは、従来リフレッシュのためにチップセットやメモリにアクセスしていた信号を、画面書き換えの無い場合にディスプレイ内で完結することで消費電力を抑制する |
テキスト編集やウェブブラウジングといったアプリケーションでは、画面の書き換えが頻繁ではなく、こうした際にPSRが有効であるという。一方、Winampが意外と画面書き換えが多いというのは、ヴィジュアル・エフェクトを有効にする場合もあるためだ |
レスポンスタイムに関連する技術としてはSmart Connect TechnologyとRapid Start Technologyを説明した。Smart Connect Technologyは、PCがスリープ状態でもメールやSNSなどとの同期をとる技術とされる。Wi-Fiや3Gなどの電波を感知しローパワーステートの状態で同期を行い、またスリープ状態に戻るというのを繰り返し行うという。アプリケーション側での対応が必要だが、その点も協力していくという。
Rapid Start TechnologyはPCがS3ステートに入った状態から一定の時間が経過した後、DRAMのデータをSSDに移行したうえでS4ステートに入る。再度電源が投入された際にはSSDからDRAMにデータを書き戻し起動するという。このワンクッション入った状態でも、起動時間はより短く、消費電力はより少なくて済むと説明している。SSDをHDDのキャッシュとして活用するSmart Response Technologyと併せ、IntelはSSDを積極的に活用する技術をリリースしていくようだ。