「すまほん。」のトップ画面

ディーツー コミュニケーションズ(D2C)は、7月7日から8月31日にかけて、電子コンテンツ店頭配信システム「すまほん。」の実証実験を行った。これは、スマートフォンやタブレット端末に向けて電子コンテンツを無料で配信し、集客に利用しようというものだ。

有料アプリが売れないと言われるスマートフォン業界で、コスト負担をコンテンツプロバイダでもエンドユーザーでもなく、集客に利用する店舗が行うという新しいビジネスモデルを提案する。

ユーザー課金しない有料コンテンツ配信

「すまほん。」は、自分のiPhoneやiPad、Android端末などのスマートフォンやタブレットを使って、店舗内において無線LANを介して雑誌や書籍などの電子コンテンツを閲覧することができるサービス。喫茶店などに置いてあるマガジンラックを想像するとわかりやすい。店舗が雑誌や新聞を購入しておき、利用者が来店中にだけ無料で読むというスタイルだ。

雑誌カテゴリと雑誌の選択画面(サンプル)

実証実験では、ユーザーは店頭での待ち時間や空き時間に、1時間無料で電子コンテンツを閲覧することを可能にした。導入店舗にとっては、「すまほん。」を利用することで、サービスの充実と集客力向上を図ることが可能になる。

ディーツー コミュニケーションズ 営業本部営業部部長 澤宏明氏

「弊社の顧客は、6割がコンテンツプロバイダです。アプリを有料で購入するという習慣がユーザーに根付いていない中、いかにコンテンツプロバイダが収益を上げられるようにするかを考えたとき、ユーザーが直接購入するのではなく、企業が購入して配布するというビジネスモデルもあり得るのではないかと考えました」と語るのは、ディーツー コミュニケーションズ 営業本部営業部 部長の澤宏明氏だ。

このサービスを開始するにあたって問題になったのが費用感だ。実証実験の目的の1つは、それを探ることにある。

「出版社側はコンテンツがきちんと売れれば良いわけですが、店舗側がどれくらいの金額をコンテンツに支払ってくれるのかわからなかったので、そのコスト感を見極めるための実証実験です」と澤氏は語る。今回の実験では無料でコンテンツが提供されたが、その効果によって店舗側がいくらまでなら出してもよいかを判断しようというのだ。

55%のリピーターを獲得

実験はコーヒーショップや飲食店のほか、家電量販店、高速道路のパーキングエリアでも行われた。パーキングエリアは休憩時の利用を見込んだもので、家電量販店は雑誌に掲載された商品を見ながら購買するという利用シーンを想定したものだ。

コンテンツとしては約150誌の雑誌を用意。ファッション誌や情報誌、週刊誌などが中心だ。ユーザーは専用アプリをダウンロードし、店舗ごとに割り振られた店舗コードを入力。利用開始から1時間だけコンテンツを読むことができる。実験では雑誌の全ページが公開され、いわゆる冒頭部分のみの試し読みという形はとらなかった。

店舗リスト(サンプル)

店舗コードの入力画面

「コンテンツを守るためと、極端な長居を防止するために見放題とはせず、1時間限定にしました。アプリを起動し直したりしても、1店舗では1日1回しか利用できません。ただ、別の対応店舗に移動すれば繰り返しの利用は可能です」と澤氏。

ユーザーに対しての告知は特設サイトやFacebook、および対応する店舗でのポスターや卓上POPで行われた。大々的な告知ではなかったため「すまほん。」の利用を目的とした来客がどの程度あったかはわからないが、期間中に2回以上利用したリピーター数は55%に上ったという。

「iOSとAndroidで比較すると、iOSが65%といったところでした。閲覧時間は3~10分程度が最も多く、平日の昼前後の利用率が高いという結果が出ました。休日にもっと利用されると思いましたが、休日は友人と一緒に行動するためか、思ったほど使われませんでした。ユーザー層で最も多いのは30~40代の男性で、それに続いて20代女性が多かったようです」と澤氏は分析する。