タカラバイオは8月17日、食中毒の原因となるサルモネラ菌や循環式浴槽水の汚染で問題となったレジオネラ属菌などの、生きた病原性細菌のみを選択的に検出、定量するためのシステムを開発した。同システムは、生菌のみを選択する試薬・装置と、病原性細菌の検出試薬からなり、菌種に対応した生菌のみを選択する試薬3種および専用装置は8月30日から発売される。

食品製造の品質管理工程や環境分析では病原性細菌の検査を実施する必要があるが、従来は病原性細菌を寒天培地などで数日間培養し、細菌を増殖して検出する「培養法」が一般的に行われてきた。また、最近では培養法よりも早い数時間で、かつ高感度に検査が行える手法「遺伝子増幅法(PCR法またはリアルタイムPCR法)」を用いて病原性細菌を検出する手法が広まりつつあるが、現行の遺伝子増幅法では、混在する死んだ菌(死菌)の遺伝子(DNA)もあわせて検出してしまい、生きた菌(生菌)のみを検出することができなかった。

今回同社では、死菌も一緒に検出されるという課題の解決のため、生菌の持つDNAが薬剤修飾されにくいことを利用して生菌由来の遺伝子を選択的に検出するNorDiagや森永乳業が知的財産権を保有する技術を、日本での実施権の許諾を受けて実用化。さらに自社開発を進めることで、生菌のみを選択する工程における薬剤の反応性を高めることに成功しているという。これにより、生菌のDNAを1日以内で検出することが可能となり、これまでの培養法と比較して検査に要する時間の削減ができ、かつ生菌のみを検出することが可能になった。

なお、同システムではサルモネラ菌やレジオネラ属菌に至適化した試薬のほか、グラム陰性菌を対象とした汎用性試薬を用意。また、生菌と死菌のDNAを区別する際に必要な専用の光照射装置も同時に発売するほか、すでに提供されているリアルタイムPCR試薬(サルモネラ菌検出用/レジオネラ属菌検出用)やユーザーが確立した検出用PCR/リアルタイムPCR試薬(グラム陰性検出用菌)および装置を使用することで、各々の生菌由来のDNAのみを検出(生菌のみを検出)することができるという。

生菌由来の遺伝子を選択的に検出する技術。サンプルにEMAという薬剤を含む試薬を添加した後、光を照射してDNAと反応させる。この時、生菌では薬剤が内部に浸透しないためDNAへの化学修飾は起こらないが、死菌由来DNAやその他、サンプル中に含まれるDNAはEMAによって化学修飾される。修飾されたDNAは反応が阻害され遺伝子増幅できないため、EMA処理後の遺伝子増幅法による検出では生菌由来遺伝子のみが検出されることとなる

価格は光照射装置(1.5mlチューブ16本)が14万7000円、サルモネラ菌用生菌DNA選択試薬)(50回分)が5万2500円、レジオネラ属菌用生菌DNA選択試薬(50回分)が5万2500円、グラム陰性菌用生菌DNA選択試薬が(100回分)が5万2500円とするほか、今後も、O-157を初めとした腸管出血性大腸菌などの製品ラインアップを拡充することで、2年後には関連製品をあわせて年間2億円の売り上げを目指すとしている。