米IntelのCEO人事に関する話題が持ち上がってきている。現在、同社CEOは2005年から同職に就任しているPaul Otellini氏だが、次期後継者と目されていたSean Maloney氏は病気療養のためいまだフルタイム勤務には復帰できておらず、かつて候補の1人だったPat Gelsinger氏はすでに同社を去っているなど、後任人事で不透明な状況が続いている。米Wall Street Journalの3月21日付によれば、こうした情勢を受けて後任候補として米Hewlett-Packard (HP)幹部の1人にIntelが接触を行っていたという関係者の話が伝わっている。

この人物とは現在HPでパーソナルシステム部門(PSG)を統括するTodd Bradley氏で、これまでDellが君臨していた世界のPC市場トップメーカーの座を奪い、最近ではwebOSを中核としたスマートフォンやタブレット戦略など、次々とHPの新境地を切り開いた立役者として知られる人物だ。もともと2006年にHPに参加するまではPalm CEOだったという経緯もあり、モバイルデバイス市場の情勢にも詳しいとされる。現在、Intelは急成長分野であるスマートフォンやタブレットなどモバイル向けプロセッサの提供で後手にまわっており、米金融街からの突き上げを受けている。奇しくも同日には同社UMG担当のAnand Chandrasekher氏がIntelを去るという話題も出ており、将来計画に対して暗い影を落としている。これを挽回するための人事がBradley氏の引き抜きだったが、結局同氏はHPにとどまることを選択したという。

今回の件で判明したのは、Intelの新分野での戦略を描くのに苦戦していること、そしてトップ人事の不明瞭さだ。WSJによれば今回の件でHPとIntelではコメントを断っているものの、IntelではCEO人事について「Otellini氏はまだ60歳とわかく、リタイヤの65歳まではまだ猶予がある」とコメントしている。一方でCEO後任の筆頭候補であるMaloney氏は2010年3月から脳卒中による病気療養に入っているものの、今年1月にはパートタイムでの業務に復帰しつつあるという。関係者の話として、いまだ同氏は次期CEOの筆頭候補であり、そうした意味で外部からのCEO獲得に向けた動きを行っていないというのだ。実際、Intelの過去のCEOはすべて内部出身であり、COOの座を経てCEOに昇格するなど、順当な出世コースを描く傾向がある。もしBradley氏のような外部の人間をCEO候補として模索するならば、それはかなりイレギュラーなことであり、Intelの中で何かが変化している兆候なのかもしれない。