米Appleは1月31日(現地時間)、世界のすべてのエリアでXserveの販売を終了した。OS Xへの移行時期から長らく続けられてきたApple唯一のサーバ製品だが、その10年の歴史に幕を閉じる。このXserve終了を受け、既存のユーザーがどのような将来プランを持っているのか、またサードパーティが代替となる製品を同日にリリースするなど、新たな動きが出始めている。

Xserve

Xserveが廃止……そのときユーザーは?

Xserveは2002年5月にリリースされ、PowerPC G4からG5を経て、現在のクアッドコアXeon×2のモデルまで系譜をつないでいる1Uのラックサーバだ。もともとはファイルサーバとしての利用のほか、WebObjectsなどを組み合わせたWebサーバ、HPCクラスタとしての利用を想定していたようだが、エンタープライズ向けでは大きく需要を伸ばせず、後半は開発機としての需要や映像クリエイターが主な販売対象だったとされている。なお、販売中止自体はかなり早い時期から決定されていたとみられ、2008年2月にはXserve RAIDが生産中止となり、Xserve本体のアップデートも2009年の時点で止まっていた。その後、2010年11月に正式に生産中止が予告され、今回の1月末での受注完了となった。なおAppleInsiderによれば、1月中に発注を行ったとしても、実際の製品提供は4月以降になっていたようだ

Appleによれば、同社ではもう同型のサーバ機を継続開発する意向はなく、既存ユーザーに向けた移行ガイド(PDF)を出している。そこでは、小規模ネットワークの基本的なタスクであればMac miniにSnow Leopard Serverの組み合わせで十分であり、さらに高い性能が必要であればMac Proを活用するようアドバイスしている。とはいえ、これでは既存製品で代替案を示しているだけでしかなく、さらにいえば将来の利用パスを保証するものではない。これについて、Channel Registerが既存のXserveユーザーの感想や将来プランについて紹介している

この調査は、Enterprise Desktop Allianceが1,200のXserveユーザーを対象に実施したもので、それによれば多くのユーザーがApple側の事情は理解できるとしながらも対応に苦慮しており、今後少なくとも2~3年は現行のXserveシステムを維持していく予定だという。アンケート対象となったのは中小企業、大企業、政府機関、教育機関の主に4つのカテゴリであり、これらの組織では計120万台のクライアントをXserveを使って管理しているようだ。とはいえ、Xserveのサイズにフィットした代替プランがすぐにあるわけでもなく、当面は現状を維持しつつ、新たなリプレイス策を練っていくことになる。将来的にはファイルサーバとしてWindows、WebサーバとしてUNIX/Linuxを挙げているユーザーの比率は高いものの、ソフトウェア管理やネットワーク管理面では「やはりMac OS X以外に代替はない」との認識が高い。またXserveの廃止決定が、今後のネットワーク内へのMacマシン展開に支障をきたすと考えているユーザーが少ないところにも注目したい。

代替製品を探せ

このようにXserveを使う既存ユーザーの需要を満たす製品ポートフォリオが存在しないスイートスポットに、彗星のごとく登場したのがActive Storageの「ActiveSAN」だ。同社は数日前からティザー広告で新製品発表をメディアに予告しており、Xserve受注終了の1月31日のタイミングで正式発表したのがこの製品だ。内容的にはIntelのクァッドコアXeonを組み込んだ1Uラックサーバで、Xsanと呼ばれるMac OS Xネットワーク向けのファイルサーバとしての利用を想定している。ベースOSにはRed Hat Enterprise LinuxとQuantumのStorNextを組み合わせており、XsanならびにStorNextネットワークでのメタデータサーバとして簡単にセットアップが可能な仕組みを採用しているという。次の選択肢の1つが提供されることは、完全な代替は無理としても、ユーザーにとっては朗報だろう。

1Uラックサーバの「ActiveSAN」

ActiveSANの設定メニュー

そしてXserveの開発が完全に終了したことで、Appleが次にどのような手を打ってくるのかという点が気になるところ。最近、Appleは企業向け開発のリソースをiPadなど新型デバイスに集中させており、製品廃止決定後にXserveのスタッフをこれらの部隊に合流させたことが伝わってきている。iPadとiPhoneの法人向け営業が強化されているというニュースもたびたび伝わってきており、同社は次のフロンティアとしてMacを使った企業システムの売り込みではなく、より大きな台数の需要が見込めるモバイルデバイスを考えているようだ。またMac OS Xについても、現行バージョンではMac OS XとMac OS X Serverの2系統が用意されているが、Server版については将来的に廃止、あるいは両バージョンを近いうちに統合するのではないかと予測するメディアもある。さらには大胆に、デスクトップMacそのものを2012年までに廃止するのではないかと予測するところさえある。

それほどドラスティックな変化が急激にやってくるとは考えにくいが、同社のサーバ関連製品はそう遠くない将来にフェードアウトすることになるのかもしれない。