ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズは、米ラスベガスで開催されたInternational CES 2011において、Android搭載スマートフォンの新製品「Xperia arc」を発表した。現地で、同社の端末デザインやUIなどを担当するChief Creative ProducerでHead of UX Creationの黒住吉郎氏に話を聞いたので紹介しよう。

ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ 黒住吉郎氏

同社は、現在スウェーデンのルンド、東京、米サンフランシスコ、北京の4カ所に大きな開発拠点を設置している。ルンドのUXクリエイティブデザインセンターでは、ソフトウェアやハードウェアのデザイン、商品コンセプトなどを決めており、その統轄をしているのが黒住氏だ。もともとソニー本体で商品企画や開発、新コンセプトのプランニングをしており、これまでウォークマンケータイやサイバーショットケータイを含めたフィーチャーフォンも手がけてきたという。「ソニー・エリクソンらしいものをどう作れるか」という観点からプランニングなどを行ってきたそうだ。

2003年からスウェーデンに移り、現職にある。スマートフォン「Xperia」も黒住氏が担当した製品で、このブランド名やロゴなどのブランディングも彼のチームが作り上げたものだ。

Xperiaの開発自体は07年からスタート。08年中盤にWindows Mobileを搭載した1号機であるXperia X1をリリースし、その後Xperia X2を提供、09年4月に発売したのがOSにAndroidを採用したXperia X10だ。Android端末投入までに多少の間が空いているが、それは「新しいOSであるAndroidを使ってどうやったらいい商品を作れるか、Androidを使いながらどういい物を作るか」を検討してきた結果だという。そして今回、Android 2.3(Gingerbread)を搭載したXperiaの新モデルXperia arcをCES 2011で発表した。

弓道をイメージした「凜」としたデザイン

ソニー・エリクソンの「デザインフィロソフィー(哲学)」には、"どれだけ人に合ったデザインか"という「ヒューマンセントリック(人間中心)」という考え方が根底にあるという。

Xperia X10のデザインではこれに、コカ・コーラの瓶ボトルに見られるような"女性のボディの形状"である「Human Curvature(人の曲線)」という要素を追加。さらに液晶部分に「岩をパキッと割ったときに現れる直線」をイメージした直線を採用し、緊張感を出している。

Xperia arcでは、こうしたデザインコンセプトを踏襲しつつ、新たに「弧」という概念を追加した。この弧は、橋のアーチのような横向きの弧ではなく日本の弓道から着想したものだという。

CES 2011で発表されたXperia arc

Xperia arcのデザインは、弓道で言うと弓を引き分けた「会」の状態での弧がもともとのモチーフとなっており、弓を構えた「この立ち姿が凛としている」ということから、「凜」をデザインビジョンとしている。弓道では会の状態で心を落ち着かせ、自然と矢が発射される「離れ」にいたるが、これを黒住氏は「柔らかさとともに心が張っているけど穏やかな感じ」と表現している。このイメージは特に外国人にはなかなか伝わりづらかったようで、弓を引く動作をしながら説明してきたそうだ。

液晶の直線、背面の曲線がXperia arcのデザインの特徴

弓を引ききった状態の「会」の凛とした姿をデザインテーマにしているという