2009年にはついにCGムービーの世界へ。プレイセットプロダクツのキュートな作風とはガラリと異なり、かなり硬質でクール、ガジェットテイストの強いビジュアルだ。
「ちょうどCGムービーの制作を始めた頃でもあり、(CGは)G-SHOCKの質感や盤面の光り方、光沢なども出せてぴったりな手法だろうと思いました。『Season 2 "Emergency"』は、アメリカで公開するとのお話でしたし、やはりキャラクター感を強調しようと思ったんです。ヒーローが数多くある国なので、僕も描かせてもらっているマーベルのスパイダーマンのような雰囲気にできればなと」
![]() |
G-SHOCK MAN初となるショートムービーは、2009年渋谷のクリスマスイベントにて公開 |
表現に関しては、顔となる時計の素材感をじっくり観察し、印象を損なわないようにCGへと落とし込むことに注力した。例えば、G-SHOCK MANがパンチをする場面では、彼らの手の甲がアップになるが、独特のしぼ感やてかりといった微妙な樹脂感が表現されている。
「好きで作っているだけに、この辺はやり始めると止まらなくなっちゃうんですよね(笑)。あとは動き。CGだと地面をしっかり踏んでいる感じが出しづらいこともあるので、できるだけ忠実に表現するようにしました」
またビジュアル面と双璧の魅力となっているのがストーリーだ。世界一タフな時計が時間軸を守っているという設定。G-SHOCK MANとは「時間軸を守るヒーロー」なのである。
「実はムービー全体が"1秒間"の世界を表現しているんです。世界が何事もなく動いているのは、時間の規則を破ろうとする敵を彼らが密かに制しているから、というイメージです。人には見えない世界なので『Another Wolrd』と名付けました。G-SHOCKが得意とする水や泥、強烈な電磁波を出す敵が出てきますが、実際に地球上にもそんな要素で時計が弱ることがありますよね。そう考えると、時計が地球を守っているという話も叶う。そんな対決が見せられれば面白くなりそうだ、ということで進めていきました」
![]() |
ニューヨークで開催されたG-SHOCKワールドツアーにて発表された長編の最新CGムービー |
登場するキャラクターはみな、品番を名前につけている。これこそが、G-SHOCK個々の機能をストーリーに存分に活かすポイントなのだという。
「G-SHOCKには、5600や6900のように品番が必ずあります。だから品番を名前にすれば、機能をキャラの個性を通して知ってもらえるじゃないですか。今後もたくさんの型が出せるだろうし、購入するきっかけになってくれればとも思うんです」
指令塔を務める5600、厳しい戦いの最前線で戦うFROGMAN&MUDMANなどの周囲で、戦闘は同時多発的に起こっていく。純粋に作品だけでも楽しめる内容だが、ファンならその絶妙な配役にニヤリとするはずだ。
「やっぱりリーダーには定番の5600、多機能モデルでは最高峰のFROGMANなら難しい現場もイケそうだ、新作はロボットぽい感じで…とイメージを膨らませていきました。今後は、同じ部隊の中にも民族的な分類が作れれば、さらに深みが出せそうですよね」
![]() |
イエロー、ブルー、ピンクなどのカラーバリエーションを展開する「G-001」。G-SHOCK通の中野氏により、それぞれのモデルの個性がキャラクターに反映される |
G-SHOCKは、バリエーションを作るためだけにデザインを変えているわけではない。泥に強い形状やセンサーを活かす形状、防水性に富んだ形状とそれぞれに意味がある。だからキャラクターにしても強い個性となる。この考え方から、中核メンバーには「タフ」を突き詰めた永遠のスタンダードモデル、5600と6900が選ばれた。この2本を軸にすることで、今後登場する現行モデルはタフに加えた特徴やシーンをアピールでき、新作は新作ならではのインパクトを持たせられるというわけだ。
「例えば、往年の人気モデルであるジェイソンを彷彿させる、最新モデル『G-001』は忍者っぽい存在です。分身の術でカラーリングを紹介してるんですが、現在発売中のモデルだけに楽しく見られそうかなって(笑)」
このスタッフすら、まだ敵か味方かわからないという謎のキャラは、今後さまざまな面で関わってくるキーマンらしい。このようにヒーローの数は無限大、ストーリー案も膨大にある。中野氏としては、守り中心だった今回のエピソードをさらにエリア拡大していきたいのだとか。続編に登場させるキャラクターモデルも実はすでに検討済み。あとはどれだけ案をコンパクトにまとめられるか、だ。……"ジャパンブランド"としてのエンターテインメントを