アジャイル手法導入の最大の難関は中間管理層

「経済的予測」や「ソフトウェア開発」というキーワードから考えると、アジャイル手法は経営層とエンジニアが取り組むべき課題のように思われる。

企業でアジャイル手法を導入するにあたり、経営層とエンジニアはそれぞれどのような姿勢で臨むべきかと尋ねたところ、「重要なのはこの2つの層の間に位置する中間管理層」と同氏は答えた。中間管理層とは、プロジェクト・マネジャー、テスト・マネジャー、アーキテクトなどを指す。

というのも、中間管理層は「現場が達成した技術的な成果を経営層が評価するビジネス上の成果に変換する」という難しい課題を抱えているからだ。

IBMとRationalの20年間にわたる経験から、企業がアジャイル手法を取り入れる際に中間管理層に働きかけることが大切であり、そのための方法をつかんだという。

「企業の変革に中間管理層が関わらなければ成功の確率は25%しかない。つまり、中間管理層から、企業変革への参画に対する合意を取り付けられるかどうかが、アジャイルの成功のカギを握っているというわけだ」

アジャイル手法導入を成功させるための3つのポイント

最後に、企業がアジャイル手法の導入に成功するためのポイントについて聞いてみた。すると、同氏は「われわれが30年間にわたり企業の変革を見てきたうえで学んだことがある」と教えてくれた。

それは「増分型手法をとること」だ。なぜなら、抜本的な改革を行うと消化しきれないからだ。増分型手法をとるとなると、どこから手をつけていいかが気になるところである。

「多くのユーザーは要件管理とアーキテクチャ管理から着手しがちだが、この順番は望ましくない」と同氏。プロジェクト・マネジャーの意識変革が難しいと前述したように、プロジェクト・マネジメントの整備から始めなければ、成功は難しいという。

次に優先順位が高いのは「変更管理のインフラを整備すること」だ。変更管理はソフトウェア開発の測定の原点であり、基盤があって初めて組織の変革が可能になるからだ。

3番目に行うべきこととしては、「テスト管理と品質管理」が挙げられた。同氏によると、この部分がアジャイル手法の恩恵を最も受けられ、測定も明確に行えるという。これらを実行した後に、要件管理とアーキテクチャ管理を行えばよいという。

米国ではアジャイル手法を取り入れて成果を得ている企業があるほか、日本でも問い合わせが増えているという。企業全体の生産性向上が求められている今、その手段としてアジャイル手法を検討してみる価値はあるだろう。