8月25日、神奈川県横浜市のパシフィコ横浜にてマイクロソフト主催の技術カンファレンス「Microsoft Tech・Ed Japan 2010」(以下、Tech・Ed 2010)が開幕した。

Microsoft Tech・Ed Japan 2010はパシフィコ横浜にて開催された。写真は昼過ぎのものだが、朝一には受付ブースに長蛇の列が。

Tech・Edは、Microsoftテクノロジーをテーマにした開発者向けカンファレンス。最新技術動向や活用事例の紹介のほか、各種プラットフォーム向けプログラミングを学べるハンズオンセッション、開発者がちょっとしたノウハウを披露するライトニングトークなど、多彩なセッションが3日間で合計130以上催される。

初日の基調講演では、マイクロソフト 執行役 デベロッパー&プラットフォーム統括本部長の大場章弘氏が登壇。同社テクノロジーの活用事例や最新技術動向などが紹介された。

ここでは、同氏の講演を簡単にご紹介しよう。

導入が進むWindows Azure

クラウドの本格普及期と位置付けられる2010年、Tech・Edの主役となったのはやはりWindows Azureである。

マイクロソフト 執行役 デベロッパー&プラットフォーム統括本部長 大場章弘氏。

大場氏は、講演の冒頭、Windows Azureが「PDC 2008」で発表されたことや今年2月の「Microsoft Tech Days 2010」でサービスを開始したことを振り返ったうえで、すでに本番システムに適用する企業が数多くあることを強調。その中から代表的なものを取り上げて紹介した。

最初に取り上げられたのは、Windows Azureで動作するID管理システムとMicrosoft Exchange Onlineを連携させているバンテックの社内システム。さらに、Azure上の運用事例として、パソナで活用しているプロジェクトの予実管理アプリケーション、ブルーオーシャンシステムが提供する介護/医療/保育向け業務アプリケーション、日本電子計算が提供するコマーシャル・ペーパー(CP)の取引サービス、イーストが提供する電子出版プラットフォームサービスが紹介され、Windows Azureとの連携が可能なNTTコミュニケーションズのクラウド環境なども取り上げられた。

イーストが提供する電子出版プラットフォームサービス「書蔵」でデモ。使用しているのは東芝が先日発売した、タッチディスプレイを2画面搭載した折りたたみ型ミニノートPC「libretto W100」。

また、先月米国のワシントンDCで行われた「Worldwide Partner Conference 2010」にて、Windows Azure platform applianceを発表したことも紹介。米Dell、米eBay、米HP、富士通の4社が早期共同開発企業として名を連ね、国内でも富士通と共同開発を進めているほか、富士通のデータセンターを使ってWindows Azureの提供サービスを展開していくことにも触れた。

そのほか、Windows Azureによるクラウドソリューションをよりリッチにするうえで有効なSilverlightの普及にも力を入れており、SilverlightがWindows Phone 7に標準で搭載されることや、先日閉幕した全国高校野球選手権大会のストリーミング動画がSilverlightの上で再生され、ネットワーク帯域幅に合わせて自動的にビットレートが選択されていたことなども説明された。

全国高校野球選手権大会のストリーミング動画のプレイヤーはSilverlight製だった。

2011年以降にリリース予定の最新技術

Windows Azureの活用事例に続いては、同社が開発中の最新テクノロジーが披露された。具体的には来年以降のリリースが予定されている「Codename "Dallas"」、「Visual Studio "LightSwitch"」、「Internet Explorer 9」、「Windows Phone 7」がデモを交えながら紹介された。

これらのうち、最初に紹介されたのはDallasである。Dallasは、端的に言うと「データのマーケットプレイス」(大場氏)。Dallasで提供されているデータはアプリケーションに取り込んで利用することが可能で、コンシューマー向けアプリケーションを企画する際などに重宝しそうだ。課金機能やID管理機能を提供しており、データを利用するためのサブスクリプションを販売/購入することが可能。現在、試験運用が行われており、NASA、米国政府、国連などが写真やデータを提供している。Open Data Protocolなどに対応し、データを比較的容易に取り込める点が大きな特徴。デモでは、NASAから火星の写真や地理データを取得して3D表示するアプリケーションや、日本企業のゼブラル(Xebral)が提供する上場企業の株式情報を取得し、富士ソフトが運営するWebサイト「みんなの会社情報」に取り込む様子が示された。

NASAが提供するデータを使って作成した火星を3D表示するアプリケーション(左)と、Xebralが提供するデータを「みんなの会社情報」に取り込んだときの様子(右)。

また、テンプレートベースのアプリケーション開発環境「Visual Studio "LightSwitch"」のデモでは、データソースと画面レイアウトを定義するだけで、ソースコードが自動生成され、実際に動作するアプリケーションができあがる様子を披露。わずか数ステップの作業でリボンインタフェースを備えた書籍管理アプリケーションが作成された。

アプリケーションの作成に必要な作業は、GUI上でデータソースと画面を定義するだけ(左)。生成されたリボンインタフェースのアプリケーションでは入力値のチェックも自動で行われた(右)。

一方、Internet Explorer 9については、9月15日にベータ版をリリースすることや、JavaScriptのパフォーマンステストで他のブラウザと変わらぬ結果を出していること、Acid3で95点をとっており、間もなく100点になるであろうこと、GPUアクセラレーションに対応していることなどが紹介された。

JavaScriptのベンチマークテストでは、IE8から10倍近くパフォーマンスを改善(左)。GPUアクセラレーションにも対応するため、GPU搭載マシンでは、他のブラウザで固まるようなアニメーションもIE9だとスムーズに表示される(右)。

そして、Windows Phone 7に関しては、アプリケーション実行環境にSilverlightが採用され、アプリケーション開発にMicrosoft ExpressionやMicrosoft Visual Studioをそのまま活用できることが紹介された。「.NETアプリケーションの開発に慣れた技術者であれば、Windows Phoneアプリケーションを初めてでも簡単に作れる」(大場氏)と説明したうえで、Expressin Blendを使って簡単なTwitterアプリケーションを作り、「まだ国内に数台しかない」(大場氏)というWindows Phone 7の実機に移して実行する様子などが示された。

Expression BlendでTwitterアプリケーションを作成(左)。それをWindows Phone 7で起動した(右)。

マイクロソフトの技術者サポート施策

大場氏は最後に、クラウド時代を迎え、IT技術者の役割が従来と変わってきていることを説明。これまで行っていたハード/ソフトの購入や、バージョンアップの適用、トラブル事象の切り分けといった作業が不要になり、代わりに、進化したツール/テクノロジーを活用するスキルやITシステム全体を設計するスキルなどがこれまで以上に求められるとしたうえで、そういった立場にあるIT技術者をサポートするべく、「Azureコミュニティの立ち上げ」、「Azure無償利用プログラムの提供」、「アーキテクト育成道場」、「マイクロソフト本社のシニアアーキテクトとの交流会」、「PDC 2010の最新技術コンテンツ配信」などを行っていくことを約束した。