本誌選定の4人の代表取締役による Microsoft Online Servicesの体験レポートをお送りしている「Microsoftクラウド体験記」。これまでの3名には初級者という立場からその使い勝手や利便性について紹介してもらってきたが、今回は趣向を変え、Microsoft Online Servicesのソリューションプロバイダーとして活躍するオフィスアイの山崎愛氏に、SharePoint Onlineの"本当"の利用メリットと、やや応用的な活用方法について解説してもらおう。

執筆者紹介

山崎 愛(YAMASAKI Ai)
- オフィスアイ 代表取締役


1999年よりマイクロソフト認定トレーナとして、マイクロソフト製品の技術教育に従事し、システム管理、.NETアプリケーション開発などに関する研修コンテンツの企画、開発、実施を行う。2008年4月にオフィスアイを設立。現在は"SharePoint Server"に特化したコンサルティング、技術研修、ソリューション開発およびサイト構築支援などを行っている。

2004年に米MicrosoftよりSharePointの分野にて日本初のMicrosoft MVP(Most Valuable Professional)として表彰され、以後現在まで連続受賞。主な書籍に、「ひと目でわかるSharePoint Server 2007 [日経BPソフトプレス]」、「VSTOとSharePoint Server による開発技術[翔泳社]」がある (いずれも共著)。

なお、本稿で解説しているMicrosoft Online Servicesについては、マイクロソフトからソリューションプロバイダーとして認定されており、代理販売なども行っている。 ブログはhttp://shanqiai.weblogs.jp/

SharePoint Onlineとは

SharePoint Onlineは、Microsoft Office SharePoint Server 2007(以降、SharePoint Server 2007)の機能のクラウドサービス(ホスティングサービス)です。

※ SharePoint Onlineを含むクラウドサービス「Microsoft Online Services」の詳細については、こちらの記事をご覧ください。

SharePointでは手軽に情報共有サイトを作成できます。SharePoint Onlineはクラウドサービスであるため、社内にSharePointを構築する"オンプレミス" での利用に比べると、サーバーの導入コストおよび管理コストを抑えやすいというメリットがあります。ただし、SharePoint Onlineと比べるとカスタマイズ機能等での一部制約があります。

SharePoint OnlineにはStandardサービスとDedicatedサービスの2種類があります。StandardサービスではVisual Studioを使ったコードによるソリューション開発はできません。基本的にはSharePoint の標準機能を利用するか、もしくはJavaScriptベースのコーディングまでです。

一方のDedicatedサービスは企業や組織が専用のアーキテクチャーを占有するタイプのサービスとなるため、Standardサービスでは実現できないようなソリューション構築も可能です。なお、本記事では多くの組織で利用されているStandardサービスをベースに説明します。

SharePointの利点

SharePointはよく"グループウェア"である捉えられることがありますが、これは誤解です。厳密にはグループウェアではありません。あくまでもグループウェアのようにも利用できるというだけです。SharePointはWeb上で様々な情報共有をするための基盤システムであり、アプリケーション開発基盤であると考えることが正しい捉え方です。

数多くの情報共有ツールが存在する中で、SharePointを選択するにあたり、SharePointのポータルサイトを構築する利点は何であるかという本質を捉えておくことは非常に重要です。一番の利点は、「SharePoint上に情報を格納することで情報の様々な形式での"情報の関連付け"が可能であり、関連情報をWeb上で共有できること」です。

たとえば、SharePoint上には様々な種類のページを作成できますが、その一つに "リスト"があります。リストは、ExcelスプレッドシートをWebページ化したように、「列」と「行(アイテム)」で構成されるページです。Web上で利用できる簡易的な一種のデータベースと捉えることもできます。

リストには、ユーザーが自由に列を定義できます。列ごとにフィルタを設定したり、並べ替えを行ったりできます。もちろんExcelアプリケーションではないため Excel関数は利用できませんが列ごとに平均値や合計値を表示できる組み込みの関数などが用意されています。業務ではリストを使って、顧客情報、案件、トラブル情報などを共有できます。

図1 リストを使用した案件管理の例。このリストではタイトル、顧客名、見込金額、確度、担当といった列を用意しており、4つのアイテムを作成しています

※ 記事内で紹介する SharePointサイトは解説のために作成したサンプルサイトです。実業務で使用しているサイトとは異なります。