出版社によるクロスメディア

--では、出版社がクロスメディアに取り組んだという事例はあるのでしょうか。

マイケル 「meredith」というサイトをご存じでしょうか。米国で有名な女性向けのライフスタイル誌を多く出版する企業です。90年代初めにメディアカンパニーへの脱却を目指しましたが、最も重要な製品として「紙媒体」を位置づけています。

「meredith」

「meredith」では、前年度からの目標成長率を達成するため、ダイレクトメールやWebによる加入キャンペーンを行いました。1000万人の獲得を目標にした中で、350万人をWebサイトで獲得できたそうです。紙のレスポンスカードを送付する従来型のやり方では、ユーザー1人に対して20ドル掛かりますが、Webでは1ドル50セント。高い費用対効果が実現されていることが分かります。

--出版社は、こうしたクロスメディアンパニーへの変革のみでしか生き残ることが難しいのでしょうか。

マイケル それは極論かもしれませんが、インターネットを上手に活用し、良質なコンテンツをユーザーコミュニティの中で作り上げることはできると思います。

インターネットが革新的、そして破壊的であるという理由、それは、新しいやり方を提示すること、そして、特定のトピックの周囲にいろいろな人を集めてオポチュニティを形成できるということです。

「JPG Magazine」は、この2つの面を上手く活用した写真誌で、以下の要素を組み合わせた紙面づくりが特徴的です。

1、ユーザー生成のコンテンツ
2、特定のテーマに興味を持った人たち
3、パブリッシング

その仕組みは、エディターが選んだ3つのテーマに対してユーザーが写真を送り、コミュニティメンバーが投票を行うことで、人気写真のみを紙面に掲載するものです、これは、まさにオンラインを活用しながらコアの商品は「紙」であるという好例だと思います。

「JPG Magazine」

通常、出版社では発行部数の50%が売れれば成功といいますが、「JPG Magazine」の場合は80%の実売数を誇っているそうです。「コンテンツ制作にコミュニティが参加したこと」、これが成功の要因だと編集スタッフは説明してくれました。