メインフレームエミュレータの「Hercules」を提供する仏TurboHerculesが3月、欧州委員会(EC)に対して申し立てた競争法違反の調査に関連して、著名なオープンソース支持者が米IBMがTurboHerculesに対して送った書簡を公開し、「これまでのオープンソース支持は偽善」とIBMを激しく非難している。

TurboHerculesは11年前より、IBMのメインフレームのオープンソース実装を提供している。IBMは自社以外のハードウェア上で「z/OS」を動かすことを制限しており、TurboHerculesがIBMに解決策を求めたところ特許を主張されたことから、同社は今年3月、ECに正式に苦情を出した。

今回、IBMのSystem z担当CTO兼副社長のMark Anzani氏が3月11日付けでTurboHerculesに送った書簡を入手して公開したのは、Florian Mueller氏。ドイツ出身のMueller氏は欧州のソフトウェア開発者で、ソフトウェア特許反対運動などオープンソースコミュニティに大きな影響力を持つ人物だ。

Anzani氏は文中、TurboHerculesの申し出を断るとともに、取得済み特許106件と申請中の特許と67件の表を添付しているが、Mueller氏はこれに対し、「IBMのフリー/オープンソフトへの支持は、ビジネスの利益が絡むとなくなる」としている。さらには、106件の特許のうち2件(米国特許番号「5613086」と「5220669」)は、IBMが2005年にオープンソースコミュニティに対して提供することを公約した500件の特許にリストされていたことも指摘、「IBMの行為は偽善的」と述べている。このようなことから、IBMの特許主張は、TurboHerculesだけではなく、オープンソースソフトウェア全体にとっての攻撃、と批判している。

Mueller氏は短期的な解決策としてEUの介入を提案している。Mueller氏は2005年に結局は否決に終わったソフトウェア特許論争でロビー活動を展開するなど、ECとの結びつきがあるだけに、氏の意見は今後の動向に影響を与えそうだ。

Florian Mueller氏(2006年の「Euro OSCON」にて)