連想変換を駆使して心を鷲掴む文章を作成しよう

こんなシチュエーションはないだろうか。久しく連絡を取っていなかった友達に対してメールを送るとき、冒頭の書き出しで頭を悩ませる。こういった場合に役立つのがATOKならではの機能「連想変換」だ。例えば「おげんきですか」と入力して変換キーを押下後[Ctrl]+[Tab]キーを入力して連想変換候補を表示させると、「お変わりありませんか」や「いつも雑事にかまけ、ご無沙汰ばかりいたしまして申し訳ございません」といったフレーズを簡単に紡ぎ出すことができるのだ。

「おげんきですか」と入力して[Ctrl]+[Tab]キーを押下することで、同様の意味を持つ言葉をリスト表示してくれる優れた機能。筆者自身もこの機能の素晴らしさには目を見張るとともに普段から活用している。ATOKを持つ者だけが知る魔法の呪文、Ctrl+Tabなのだ

何気ない機能と思われがちだが、これによって文章や言葉を選ぶ際に生じる"悩む"というネガティブ要素を排除することが可能になる。また、文筆業の一端を担うものとして言わせてもらうならば、"連想変換"というネーミングが示すように、言葉や文章が[Ctrl]+[Tab]によって次々と出現してくるクリエイティブな側面にも触れておきたい。思い浮かんだ言葉をことごとく[Ctrl]+[Tab]してみる。

「この間」と入力して[Ctrl]+[Tab]を押す。"先日"や先達て"から"弥の明後日"、"過日"、"梅雨の入り"まで解説表示とともに75の変換候補があった

「考える」では"意図する"や"つもり"、"一計を案じる"などの慣用句まで328の変換候補

「言う」では、深く考えずに言うことを意味する"漫言"から"物言えば唇寒し秋の風"という芭蕉の句まで368の変換候補

「思う」もよく使う言葉だが、なかなか連想が及ばない。ATOKで思い巡らす意味の"惟る"がすぐに出てくる。「思う」の変換候補は319

「すみません」でも変換できる。この場合あまたの文例が出てくる。"失礼しました"、"恐縮です"、"申し訳ありません"、"お詫びいたします"など変換候補は215

同様に「よろしくおねがいします」では、"切にお願い申し上げます"、"伏してお願い申し上げます"、"何卒お願い申し上げます"での変換候補は265。改めて自分が使っている語彙の幅がいかに狭いかに気づかされる

連想変換は例えば、社内での文書を使ったコミュニケーションにも当然活用できる。普段何気なく交わすメールや文書等でこう思ったことはないだろうか。「あの人は、いつも同じ書き出しで、要件のみしか書いてないから楽しくないなぁ」。社内文書なのだから、そこに面白さや楽しさを見出すのは筋違いかもしれない。しかし、同じ釜の飯を食う間柄だからこそ、気の利いた文句を織り交ぜて、自分の想いや意志を伝えることが意思疎通を行ううえで重要になってくる。昨今「ライフハック」という言葉や考え方が再度脚光を浴びているように思うが、ATOK 2010を用いることによって、言うなれば「メンタルハック」を行うことも可能に思える。

例文1

渡部さん
広告営業部の佐藤です。
この間、話し合ったクライアントとの打ち合わせが決まりました。
<日程>
●月×日(■曜日) 午後13時より
よろしくお願いします。

よく見ますよね、こういった素っ気ないメール。確かに要件はこれでも伝わりはするのですが……何かひと言あってもいいんじゃない?と思われる可能性も。

例文2

渡部さん
お疲れ様です。広告営業部の佐藤です。
先日打ち合わせを行ったクライアントへの広告記事内容についてのヒアリング日程がフィックスしましたので詳細をご連絡致します。
<日程>
●月×日(■曜日) 午後13時より
スケジュールがタイトなところ申し訳ありませんが、ご協力の程何卒宜しくお願い致します。

ATOK 2010の機能を駆使して作成したのがこちら。もちろんATOKを使ってそのまま例文1が例文2に変換されるということではない。例文1でも「打ち合わせがいつ行われるのか」という要件は伝わる。が、連想変換を使って言葉を紡ぎ出すうちに例文2のような"相手の気持ち"に思いを巡らせた文面が簡単に作成できる。文章を書き慣れていても"書面上でのちょっとした気遣い"を疎かにしてしまいがち。文字変換というデジタルライフの日常において、[Ctrl]+[Tab]にはそんな効能もあるのだ。