Reutersのレポートの中盤以降では、実際に現地工場に特派員が出向いたときの状況が書かれている。だがレポートの内容を読む限り、正式に取材の許可を得たわけではなく、あくまで工場の様子を外から見に行ったというだけのようだ。招かれざる客だったといえるかもしれない。

同社の特派員が観瀾街道のFoxconn工場に行き、周囲の道路から施設の写真を撮り終え、待たせていたタクシーに乗り込んだところ、1人のガードマンが行く手をさえぎり、タクシー運転手に身分証の提示を求めてきたという。特派員が外に出て敷地内の出来事ではないので問題ないと抗議したところ、ガードマンが掴みかかってきた。

2人目のガードマンが到着し、Foxconn従業員の多くが見ている中特派員を敷地内に引きずり込もうとしてきたため、特派員はそれを振り払って歩きだそうとしたところ、今度は特派員を蹴ってきて「次に動いたらさらに攻撃する」と脅してきたという。数分後にFoxconnの警備車が到着し、特派員に車に乗るよう脅してきたため、ついに警察を呼んだようだ。

やがて到着した警察は両者の仲介に入り、ガードマンが謝罪して事なきを得たという。警察らは法的手段に訴えることも可能だと特派員に説明したが、この申し出は断ったようだ。だが、去り際に警察がいうには、「望むなら訴えるのも自由だ。だがここはFoxconnであり、彼らは特別なステータスを持っている。理解してほしい」というのだ。ある意味で治外法権がまかり通っているエリアだといえる。地元経済がこれら工場群に支えられている部分もあり、ある程度目をつぶっているのかもしれない。もし仮にだが、この特派員が彼らのいうままに敷地内に踏み込んでいたら、どんな結末が待っていただろうか?

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以上が簡単なあらましだ。Appleは、サプライヤらにストレスなく働ける職場環境を約束させると同時に、それが実現できているかを定期的に監査しているとも伝えられるが、それが同時に新たなストレスになっている可能性もあるとReutersでは指摘する。素晴らしい製品作りと秘密主義を実現するため、犠牲になっている部分がサプライヤたちなのかもしれない。ビジネス慣習上の問題とはいえ、ストレスなく働ける真の職場実現を祈るとともに、こうして誕生した製品の数々に感謝の念を持って接したいところだ。