Apple iPad

調査会社の米iSuppliは、Apple iPadの原価(BOM)予測を発表した。それによれば組み立てコストを含むWi-Fi版16GBモデルの予測原価は229.35ドルで、499ドルという販売価格の46%以下となっている。この差は上位モデルほど開きが大きくなり、3G版64GBモデルで346.15ドルと、販売価格829ドルと比較して500ドル近い差がある。これは発売時点ですでにAppleが大きな利益率を確保できることを意味する。

今回のiSuppliの調査報告で注意しなければいけないのは、iPadがいまだ発売されていない製品であり、現時点で得られているスペック表などのデータから予想できる部品価格を当てはめたものだという点だ。例えばiSuppliではApple A4プロセッサの原価を17ドルと見積もっているが、A4の正体は現在のところ不明であり、あくまで同レベルの製品と比較しての予想値となっている。以上を踏まえたうえで同社がまとめたのが下記の一覧だ。

原価予測(単位:ドル)
- 16GB(Wi-Fi) 16GB(3G) 32GB(Wi-FI) 32GB(3G) 64GB(Wi-FI) 64GB(3G)
部品原価合計 219.35 246.45 248.85 275.95 307.85 334.95
製造コスト 10.00 11.20 10.00 11.20 10.00 11.20
合計 229.35 257.65 258.85 287.15 317.85 346.15
販売価格 499.00 629.00 599.00 729.00 699 829.00

今回のiPadのBOMで最も高価だとされているのが、9.7インチのIPS液晶ディスプレイとタッチスクリーン部分で、80ドルと最も安価な16GB版Wi-Fiモデルの製造原価の3割強を占める。IPSパネルのサプライヤについてiSuppliは3社が供給に当たっているとするが、そのうちメインとなるのはLG DisplayとInnoluxの2社だと推測する。

また。タッチセンサのコントローラはTexas Instruments (TI)のものを採用している可能性が高いという。原価の順位としては次が電子部品や基盤系部品の35.30ドルで、それにA4プロセッサにDRAM(512MB)を加えた28.90ドルが続く。バッテリはリチウムイオンのポリマー電池25Wを想定しており、これが17.50ドルだという。

またiSuppliでは、問題のA4プロセッサについてARMベースのコアとGPUコアを内蔵した統合チップであり、設計はAppleが買収したPA Semi、製造はSamsungだと推測している。だがA4の出所についてはいまだ多くの議論が成されており、先日紹介したVentureBeatの話では信頼できるソースの話として「PA SemiはA4開発に絡んでおらず、設計を行ったのは既存のVLSIチーム」という情報を紹介している(「Appleの「A4」プロセッサとは何か? - エンジニアらの意見」)。

A4、PA Semi、Agnilux

このA4については面白い話題がある。米New York Timesは、「A Little Chip Designed by Apple Itself」「Agnilux? It Means ‘Won’t Say a Peep’」という2つの記事で、このA4プロセッサとPA Semiの関係についてレポートしている。それによれば、Appleが買収したPA Semiのチームメンバーの大部分はすでに同社を去っており、そのうちの一部がAgniluxという半導体設計企業を立ち上げ、米カリフォルニア州サンノゼを拠点に活動しているというのだ。

NYTでは少なくとも5~7人程度の旧PA SemiメンバーがAppleを離脱してAgniluxに参加していることをLinkedInのステータスから確認している。Agniluxの共同創業者として名前が挙がっているのはPA Semi時代にリードアーキテクトだったMark Hayter氏で、現在はCisco Systems向けのハイエンドチップの設計を行っている。Agniluxには旧Cisco在籍者も参加しており、その関係がうかがえる。NYTの報道は、前出のVentureBeatの「PA SemiチームはA4に噛んでいない」という理由の一部を裏付けるものだといえるかもしれない。