2007年1月に米Appleが「iPhone」を発表した際に、同社は米Cisco Sytemsから商標権侵害で訴えられた。iPhoneはCisco傘下のLinksysの登録商標で、IP電話機ファミリーに使用されていた。この問題はすぐに和解に達し、お互いに名称を使えるようになったものの、危うくAppleの2000年代最大のサプライズの出鼻が挫かれるところだった。
3年後の今年1月27日、Appleは10年代の幕開けをタブレット型端末「iPad」の発表で飾った。iPhoneで痛い思いをしたAppleが、まさか商標問題で同じ轍を踏むはずはないと誰もが思っただろう。ところがすぐに、富士通の米国法人Fujitsu Transaction Solutionsが米国において「IPAD」の商標登録を申請済みであると報じられた。またしても、いきなり暗雲である。
なぜAppleは同じ過ちを繰り返したのか?
しかしIPAD商標登録の背景を調べると、これはAppleのミスではなく、Fujitsuの商標登録申請を把握し、対策も講じてきているのが判る。その上で「iPad」で行けると判断した模様だ。ただし、発表ぎりぎりまで同製品の情報の表出を抑えてきたため、現段階でも商標問題が十分にクリアになっていない。
一度"放棄"扱いになっている富士通の「iPAD」
Fujitsu Transaction Solutionsの「iPAD」は、在庫管理や帳簿処理用の小売業向け小型端末だ。同社は2003年3月に、IPADの商標登録をU.S. Patent and Trademark Office(米国特許商標局)に申請した。当時すでに"i"を付ける製品が多かったためか、Fujitsuの申請はいくつかのトラブルに見舞われた。以下は2009年までの主な動きである。
2003年3月:FujitsuがIPADの商標を出願
2008年9月:特許商標局がFujitsuに対して、既存の商標との違いを説明する追加情報の提出が求めた。提出期限は6カ月以内
2009年4月:Fujitsuが期限内に追加情報を提出しなかったため、特許商標局は同社が出願プロセスを放棄したと見なす
2009年6月:Fujitsuが出願プロセスの回復を求める訴えを提出。特許商標局が受理
2009年9月:発行。30日以内に異議が申し立てられなければFujitsuの商標登録が認められる
ここでAppleが登場してくる。同社は2009年9月末に特許商標局に対して異議申し立て期間の30日間の延長を申請。さらに2度60日間の延長申請を繰り返して認められた。現在、FujitsuのIPAD商標登録申請に対する異議申し立て期限は2010年2月28日までとなっている。
一方で2010年1月16日、iPad発表の10日ほど前に、デラウエア州を拠点とするIP Application Developmentという会社が「IPAD」の商標登録を申請した。音楽、動画、写真、ゲーム、各種インターネット情報を扱うネットデバイスで、これがAppleのダミー会社ではないかと考えられている。