米ラスベガスで開催された2010 International CESの会場にて、LenovoのThinkPad X Series担当WorldWide Product Marketing ManagerのMika Majapuro氏に話を伺う機会を得た。CES中に発表された"Calpella"世代のThinkPadファミリーや、新シリーズであるThinkPad X100e/Edgeについて、いくつかの情報を得られたので、記事をお届けしたい。

ThinkPad Edgeを手にするMika Majapuro氏。筆者が日本から来たと伝えると、「僕の名前は日本人にすぐ覚えてもらえるんだ。Mikaは日本語で"美しい花"という意味なんでしょう?」。非常に気さくな方で、こちらの質問にも丁寧に答えてくれた

CalpellaプラットフォームのThinkPadについて

――今回、CESでThinkPad TシリーズとWシリーズに、Core i5などArrandaleプロセッサ搭載の、いわゆるCalpellaプラットフォームの製品が登場しました。さっそく製品スペックの資料を確認したのですが、前世代からバッテリ駆動時間のカタログ値が減ってしまっているようです。

Mika: ThinkPadブランドの製品では、製品世代が上がるごとに、バッテリ駆動時間も伸ばすことを目標としています。確かに今回、標準バッテリでの駆動時間の数値は多少減っていますが、オプションで新しい拡張バッテリも採用しています。それらを利用することで、十分なバッテリ駆動時間を実現することができるようになっています。コンピューティングのパフォーマンスだけでなく、バッテリ駆動時間についても継続して重視しています。

――過去で言えばヒートパイプの内蔵など、ThinkPadでは、毎世代、特徴のある廃熱の仕組みが盛り込まれてきました。今回の製品ではCPUのTDPが高めですし、さらにArrandaleでは、CPU側にグラフィックス機能が内蔵されています。熱源が集中してしまっているわけで、熱設計にも大きな変更が必要だったかと思うのですが、何か工夫はあったのですか?

Mika: そうです。ThinkPadにとって、サーマルに関するファンクションはとても重要です。例えば今回の製品では、冷却ファンのデザインをまた新しいものへと進化させています。従来の冷却ファン(ふくろうの羽がヒントになったとされる高効率冷却ファン「Owl Blade」など)よりも性能の向上したものが搭載されています。

――ThinkPadと言えばキーボードです。最近、日本ではThinkPad T410sで初登場した新しいキーボードの評判がとても良いです。今回発表されたThinkPad TシリーズとWシリーズのキーボードはすべて、そのT400sのキーボードが採用されているのに見えます。

Mika: その通りです。キーボードは我が社が特に力を入れている部分なので、評判は嬉しいです。Calpella世代では、すべてのモデルで、T400sと同じキーボードへと移行させました。

「ThinkPad T410s」

――個人的に、ThinkPad T410sには凄く興味があります。ThinkPad T400s同等のボディに、通常のTシリーズやWシリーズのように、ディスクリートのグラフィックスチップを搭載し、スイッチャブルグラフィックスを実現しているという説明がありました。ただ、Lenovoの発表ではそうなのですが、Web直販で購入しようとすると、そのGPUのモデル名が明確でなかったり、さらに、そのGPUのオプションが、まだ準備されていなかったりしているようです。私は、スイッチャブルなディスクリートGPUを搭載したThinkPad T410sを本当に買うことができるのでしょうか(笑)。

Mika: 販売サイトは担当外なので……。おそらくは準備が間に合っていないだけです。もう少しだけ待っていてください。ディスクリートGPUとしてNVIDIAのQuadro NVS3100Mを搭載するSKUがちゃんと存在するので、安心してください。実は、私も今回の新製品で一番のお気に入りはThinkPad T410sです。とても良く出来ているので、期待してください。

――安心しました。帰国したらすぐに注文します(笑)。ところで、お気に入りといえば、ThinkPad X300シリーズの後継機種については噂すら聞きません。あれも凄く好きなシリーズなのですが、新モデルの予定は無いのですか?

Mika: 現時点で、ThinkPad X300シリーズがCalpellaへと移行する予定はありません。ThinkPad X301が最新になります。

ThinkPad X100e/Edgeについて

――ThinkPad X100eと、同Edgeについてもお聞きしたいのですが、その前に、両機種のおおまかな特徴を紹介してもらえますか?

「ThinkPad X100e」

Mika: まずは一目瞭然。デザインがまったく違った、ともにまったくの新しいThinkPadになっています。ThinkPad X100eは、十分なバッテリ時間に、軽量なボディも実現しました。ThinkPadと言えるだけの豊富なファンクションを搭載しながら、ストリートプライスで499ドル程度と、価格も良い。是非手にとって欲しい製品です。

ラインナップも豊富で、カラーリングが多彩であったり、ThinkPad Edgeでは今の13インチだけでなく、14インチ/15インチの製品も予定しています。さらに、14インチ/15インチのThinkPad Edgeでは、13インチモデルには無い光学ドライブも追加しますので、DVDを楽しむことも出来ます。

さらに、キーボードのデザインもすべてやりなおしました。フルサイズですが従来の7列ではなく、6列の、シンプルで現代的なキーボードとしました。便利なダイレクトファンクションキーも搭載しています。もちろん、ThinkPadですから、キーボードの使い心地も優れたものになっています。

――ThinkPadと言うと、日本の「大和事業所」での、ThinkPadファミリー専用の高い水準のストレステストといった、徹底した品質テストが有名です。このX100e/Edgeも、ThinkPadの名前で出している以上、大和事業所でのテストを受けた製品と考えて問題ないですか?

Mika: ThinkPad X100e/Edgeともに、企業向けなので、日本の大和事業所で、他のThinkPadとまったく同じテストを通過しています。ThinkPadのクオリティを期待して問題ないです。

――SMB向けや、ThinkPadのエントリー製品とされているのですが、基本的にはThinkPad SLシリーズの置き換えなのでしょうか? 一方で、ThinkPadなのにカラーリングが多彩だったり、特別なキーボードを搭載していたり、量販店で店頭販売もするという話も聞きました。例えば過去のThinkPad iシリーズのように、コンシューマも意識した製品なのですか?

Mika: はい。ThinkPad SLシリーズの置き換えです。企業向け製品であり、ラージエンタープライズからSMBまで対応できるよう、高いセキュリティや信頼性/耐久性を目指しています。コンシューマ向けにはIdeaPadがあるので、異なります。ただ、出来上がった製品を見て、コンシューマでも人気の製品になるのではないかと考えています。また、学校内で生徒が利用するPCといった、教育業界向けの需要も想定しています。

――今回、AMD製のCPUが搭載されています。ThinkPadというとIntel CPUのイメージがとても強いわけですが、なぜAMD CPUだったのでしょうか? 採用の決め手を教えてください。

Mika: AMDにCPUがパフォーマンスに優れていたからです。ThinkPad X100e/Edgeにとって、グッドなパフォーマンスを、グッドなプライスで実現することができたから、AMDのプラットフォームを採用しました。

――将来的に、Intelバージョンが登場する予定は無いのですか?

Mika: ThinkPad Edgeでは、Intelプラットフォームのバージョンを投入する計画があります。将来の可能性だと断定はできませんが、ThinkPad X100eはAMDプラットフォームのみで提供していく予定です。