集中管理するなら「Advanced」製品を利用する

アクロニス・ジャパンの「Acronis Backup & Recovery 10」(以下、ABR10)には7つのエディションが用意されているが(※)、スタンドアロンで稼働するものと、1台の管理サーバで複数のサーバやクライアントを集中管理できる「Advanced」製品に大別される。

Advanced製品では、1つのネットワーク内に複数の管理サーバを設置でき、システム規模の拡張に伴う管理サーバの増設を柔軟に行うことが可能だ(管理サーバには、管理用データを保管するためのMicrosoft SQL Server環境が必要)。これにより、数台から数千台まで、規模に応じた拡張性を確保できる。

※ サーバ用製品:Advanced Server(15万円)/Advanced Server Virtual Edition(38万円)/Advanced Server for Linux(11万7,600円)/Server for Windows(11万7,600円)/Advanced Server SBS Edition(5万8,800円)
ワークステーション用製品:Advanced Workstation(1万2,000円)/Workstation(9,600円)
価格はいずれも税別。

優れたUIによる効率的な管理を実現

「Acronis」はコンシューマ市場での人気ブランドとしてのイメージが強いが、そこで培われた管理ツールの"わかりやすい"UIは、当然ながら企業向け製品にも継承されている。つまり、専任のIT管理者が不在でも効率的な運用を実現できるというわけだ。

管理対象となるマシンを(物理/仮想マシンともに)管理サーバに登録すると、ABR10の管理画面上に一覧表示され、各サーバのバックアップ状況が一目でわかるようになっている(図1)。

図1 管理対象となるサーバのバックアップ状況を可視化できる

また、バックアップデータの保管先は「格納域」として管理画面上に表示される。この画面では、データ保管先のディスク使用状況が視覚的に表され、バックアップデータ(アーカイブ)の中身も把握できる(図2)。

ここでは、格納域としてストレージの追加・削除に加えてアーカイブのベリファイ・削除といった作業を実行できる。格納域にはネットワークストレージの他にテープデバイスを指定することも可能だ。アーカイブはパスワードや暗号化によって保護できるため、社内のセキュリティポリシーにも対応できるだろう。

図2 データ格納域の管理画面

「ダッシュボード」でステータス管理

管理対象となるマシンのバックアップ状況は、ダッシュボードに表示される(図3)。もしバックアップ作業に関する問題が生じた場合は、[アラート]欄にメッセージが表示され、問題への対処方法が確認できるようになっている。

バックアップポリシーの作成

スケジューリングは、テンプレート((ポリシー)として管理できる(図4)。このポリシーを適用するだけで複数のマシンに同一のバックアップタスクを設定できるわけだ。

バックアップ方式としては「GFS」「ハノイの塔」といった、IT管理者にとっておなじみのスキームを選択することも可能だ。また、VSS(Volume Shadow Copy Servece)の使用有無や実行コマンドなどもオプションで設定でき、データベースサーバにも対応する。

図3 ダッシュボードの画面

図4 バックアップポリシーの作成画面

仮想マシンのバックアップを"ラク"にするAdvanced Server Virtual Edition

VMware ESXやMicrosoft Hyper-Vの仮想環境において、個々のゲストOSにエージェントをインストールせずに環境を丸ごとバックアップ&復元できるようにするのが「Advanced Server Virtual Edition」だ。この製品をホストOSにインストールすれば、最大で99台までの仮想マシンに対してエージェントレスバックアップを実行できる。

仮想環境への移行は「Universal Restore」オプションで

Windows環境のみの対応となるが、「Universal Restore」オプションを導入すれば、異なるハードウェアへのリカバリが可能となる。また、物理マシンの環境を丸ごと仮想マシンに移行(P2V)したり、その逆(V2P)を行うことも可能だ。もちろん、仮想マシンから仮想マシン(V2V)といった仮想マシン間の環境移行にも対応する。

データ肥大化を防ぐ「重複除外」オプション

複数のサーバをイメージバックアップすると、想定以上のストレージ容量を消費する。これは主にOSの構成ファイルの重複によるものだが、ABR10にはこの問題を解消するための「Deduplication」オプションが用意されている。このオプションを使うと、対象のマシンに含まれる重複ファイルが作業前に管理サーバ上で判別されてバックアップから除外されるため、結果として無駄なトラフィックの発生を防ぎ、ネットワーク負荷を軽減できる。

「Acronis Backup & Recovery 10」は、これまで「Acronis True Image Echo」と呼ばれていた、同社の企業向け製品の後継版に位置付けられている。