11月13日、「Webとビジネスをつなぐ、"発想と創造"」を謳うWeb開発者向けカンファレンス「Web Directions East 2009」(以下、WDE 2009)が開催された。WDE 2009では、セッションがデザイナ向けトラックとビジネス向けトラックに分かれて、世界に名だたるスピーカが様々な視点からWebを語った。

本稿ではまず、Google WaveのインタフェースデザイナであるCameron Adams氏が、基調講演で語った「Google Waveの裏舞台」というセッションの内容をできるだけ詳しくお伝えする。筆者がその後聴講したデザイントラックの全セッションについては、簡潔なレポートを別途お届けする予定だ。

Google Waveの基本

さてここで、Google Waveについてよくご存じない方のために、簡単に説明しておく事にする。

Google Waveは「コミュニケーションとコラボレーションのための新しいプラットフォーム」として、今年(2009年)5月に発表された。9月にはβ版が公開され、10万人の開発者に向けて公開済みである。現在アカウントをお持ちでない方も、既にアカウントを持っているユーザからの招待を受ける事でアカウントを取得できる。

Waveは「Emailというシステムを現在最初から作り直したらどうなるだろうか」という問題提起から始まったという。その結果、現実の対話方法をモデルにしたコミュニケーション(例:手紙をモデルにしたメールなど)とは完全に異なる、「インターネット上でしか実現し得ないコミュニケーション・コラボレーション」が実現されるに至った。

ユーザにとってのWaveは、「Emailで言うところの『メッセージ』や『スレッド』を、複数人で共同編集しているようなもの」だと考えるのが近道だ。Emailと同じく人のメッセージに「返信」することができ、それによってメッセージのスレッドが出来上がる。共同編集者はスレッドごとに設定でき、途中で追加/削除する事も可能だ。ただし、Wave上で行うのは「メッセージの送受信」ではなくあくまで「共同編集」なので、過去に送ったメッセージや他人のメッセージも全て編集の対象にできる。これがEmailとは全く感覚が異なるところだろう。そして、メッセージの内容にはリッチテキストや画像、さらにはGoogleガジェットなども含める事が出来る。

Google Waveの画面

また、Waveに対して行った変更は全て履歴としてサーバ側に残されているため、気が向いたときにいつでも再生して眺める事が出来る。これはプレイバック機能と呼ばれており、Waveに途中から参加した場合など、これまでのメッセージの流れを追う必要がある場合に重宝する。

さらに、Waveは非常に高度なリアルタイム性も備えている。Waveに対して行った編集は、全てリアルタイムで他のクライアントに伝えられる。そのリアルタイム性能たるやIMのそれをはるかに超え、1文字編集するごとに全ての共同編集者がその結果を受け取る事ができるほどだ。

Google Waveのコンセプト

Cameron Adams氏によると、Google Waveのコンセプトは「中央集権化(Centralized)」「ドキュメント」「ディスカッション」の三つを同時に実現するもの、と表現された。これらのコンセプトを同時に二つ満たすものはこれまでにもあった(例:中央集権化+ディスカッション=ニュースグループ)が、同時に三つ満たしたのはGoogle Waveが初めてだという。

Google Waveのコンセプト

これにより、今までIM/メール/ドキュメント/口頭によるコミュニケーション/印刷物など様々な方法・ツールを駆使して行ってきたコラボレーションが、たった一つのWaveを共同で編集するというモデルに変化するわけだ。

現状のコラボレーション

Google Waveを介したコラボレーション