ゲーム機や家電製品のプログラムコードを改変し、機能追加やリミッター解除を行うソフトウェアモジュールを公開している例はよく見かける。このほど、そうした形で過去6年近くにわたり改造コードやそれを導入したハードウェアを販売していた著名ハッカーが11月2日(米国時間)、FBIによって検挙された。

米連邦捜査局(FBI)は11月2日(現地時間)、米オレゴン州レドモンド在住のRyan Harrisを不正改造ハードウェアとソフトウェア販売の罪で告訴したと発表した。Harrisはハッキングの専門家で、同人物の作成したファームウェアをCATVモデムに導入することで無料でインターネットアクセスが可能になったり、通信速度のリミッターを外すことが可能になるという。複数のメディアが報じている。

TCNISOは閉鎖

eWeekの報道によれば、現在26歳のHarrisは6年前の2003年にCATVインターネット向けのケーブルモデムを改造するコードを開発し、これを販売するための会社「TCNISO」を設立、コードの配布ならびに導入済みハードウェアの取り扱いを開始した。Harrisは「DerEngel」のハンドルネームで掲示板等への書き込みを行っており、TCNISOのサポート掲示板にもその名前が散見される。なお、TCNISOのサイトは現在閉鎖されている。Ars Technicaによれば、Harrisが配布していた改造コードはMACアドレス・スプーフィングにより無料インターネット接続を可能にする機能。そしてISPによって上限が決められている通信速度制限を外して最大10倍近い速度アップを実現する機能などが含まれている。MACアドレス・スプーフィングとは正規の利用者のMACアドレスを盗み出すことで、これを利用することで正規契約なしに無料でインターネットが使用可能になる。このほか、ISPによるこうした不正チェックを回避するための「SigmaX」と呼ばれる製品も配布していたという。

FBIは今回の検挙にあたり、開発者のHarris本人ではなく、まず同改造コードを利用したユーザーをターゲットにしていたようだ。前述のeWeekとArsの報道によれば、2008年に「DShocker」のハンドルネームで呼ばれる米マサチューセッツ州在住の十代の少年(または少女)が検挙されており(名前や素性は未成年のため非公表)、同種のケースでは2002年の米オハイオ州トレドでの検挙例までさかのぼる。

現在Harrisは最大20年の懲役、3年間の保護観察、25万ドルの罰金ならびに損害賠償請求を受ける可能性があるという。