今、最も注目を集めるLinuxディストリビューションといえば、FedoraとUbuntuの2つではないだろうか。もちろんopenSUSEやMandrivaといった他のディストリも健闘していることは確かだが、Red Hatを源流にもつFedoraと、Debianをベースに開発されたUbuntuの2つが、現在のLinux業界の先頭を走っているように感じる。

両ディストリビューションはリリース時期も近い。次期Fedora(開発コード"Constantine")であるFedora 12は11月17日に、次期Ubuntu(開発コード"Karmic Koala")であるUbuntu 9.10は10月29日にそれぞれ公開する予定となっている。

今回のレビューでは、その2大ディストリの1つであり、11月中旬に正式リリースが予定されているFedora 12を取り上げ、新機能などを紹介していく。なお、10月末にリリースされるUbuntu 9.10に関しては、こちらの記事にてopenSUSEとともにレビューを行っているので、興味のある方はそちらをご覧いただきたい。

今回のレビューでは、10月20日(米国時間)に公開されたFedora 12 Beta(Fedora 11.92)を使用している。正式版リリースまでまだ日があるため、変更が加えられる可能性があるが、その点はご了承願いたい。

レビューを行う前にFedoraについてに簡単な概要を紹介しておこう。

Fedoraは、Fedora Projectによって開発されているLinuxディストリビューション。スポンサーとしてRed Hatがついている。これはFedoraがRed Hatから派生したLinuxディストリビューションであるためだ。Fedoraの開発者の中の何人かはRed Hatで雇用されている。

Fedoraは6ヵ月ごとのリリースを行っている。パッケージのサポート期間は公開後13ヵ月と短い。その代わり、最新の技術をすばやく取むというスタイルをとっている。

Fedora 12の主な変更点

実は今回リリースされるFedora 12は、前回リリースされたFedora 11に比べて改良部分は少ない。が、細かな部分で多くの改善が行われている。

その中から主な変更点をいくつか紹介しよう。

  • i686ベースのx86アーキテクチャに変更
  • Moblinの技術を導入
  • Rakudo Perl 6の導入
  • KVMの強化
  • ウェブカムサポートの増加
  • NetworkManagerのIPv6の完全サポート
  • nash/mkinitrdからDracutに変更

Fedora 11で劇的な新機能や改良が行われたが、Fedora 12ではどちらかといえばシステムの改良や向上などの変更が行われている。具体的には、最新の機器への対応やフリー/オープンソースライセンス技術を取り込んでおり、特にネットブックへの対応が進められている。

例えば、Fedora 11では32ビットのx86アーキテクチャとしてi586プロセッサをベースとしていたが、Fedora 12よりi686プロセッサベースに変更された。これは近年、ネットブックが普及していることへ対応するために行われたようだ。

i686ベースになったことでAtomの他、Pentium MやVIA C7などで最適に動作するようになった。逆にi586やAMD GeodeGX、VIA C3など一部の32ビットプロセッサがサポート外となった。

ネットブックへの対応はFedora用にMobilnが対応したことからもわかる。Mobilnとはネットブック用のLinuxディストリビューションやユーザーインタフェースを開発しているプロジェクトであるが、そこからデスクトップ環境部分であるMoblin Core EnvironmentをFedora 12で使用できるようにした。

他にもPerl 6を実装したRakudo Perlの導入やNetworkManagerのIPv6のフルサポート、仮想化技術のKVMの改良、initrd作成ツールをnash/mkinitrdからDracutに変更するなどしている。また、ウェブカムの対応が進んでおり、ウェブカムのテスト結果で対応した機器を確認することができる。