LiveCycle ES2における大きな機能強化点としては、まずクラウド対応を挙げることができるだろう。LiveCycle ES2はAmazon Web Servicesをターゲットとしたデプロイメントに対応しており、パッケージリリースと並んでAmazon EC2向けのインスタンスが提供される予定とのことだ。これによってユーザはスケーラビリティが高く強力なAmazon EC2のインフラ上で、それに最適化されたアプリケーション環境を利用できるようになる。

クラウドのパワーを活用するためのツールも充実が図られている。「Adobe LiveCycle Launchpad ES2」はクラウド上に展開されたLiveCycle ES2のサービスに容易にアクセスできるようにするためのアプリケーションである。これは1MBに満たない軽量なAdobe AIRベースのデスクトップアプリケーションで、クラウド上のドキュメントサービスを利用するためのインタフェースの機能を持っている。

ファイルをドラッグ&ドロップするだけでクラウド上のドキュメントサービスを利用できる

LiveCycle Launchpadによって、ユーザはシンプルなドラッグ&ドロップの操作だけで、クラウド上で展開されているファイル形式の変換などのサービスを利用することができるという。具体的には、ローカルにあるWordやExcelなどのドキュメントをPDFへ変換したりセキュリティポリシーを追加したりといったことが可能とのことだ。

Adobe Acrobat 9でサポートされているPDFポートフォリオ機能も、LiveCycle ES2を使えばクラウド上で利用できるようになる。PDFポートフォリオは、形式や作成元アプリケーションが異なる複数のファイルを、ひとつのPDFユニットにまとめることができる機能である。これによって文書や画像、ビデオなどのさまざまなファイルを統合し、PDFの機能を活用した資格効果の高いユーザインタフェースによって見せることができるようになる。

LiveCycle ES2ではこのPDFポートフォリオと同様の処理を、クラウド上のファイルを対象に行える機能が提供されるという。つまり、クラウド上に置かれた異なるタイプのファイルを1つのPDFユニットに統合して見せることができるということだ。昨今のビジネスアプリケーションで扱われる情報は多量化/多様化しており、それを効率良く処理するためにクラウドの能力が活用されるケースも増えている。クラウド環境でのPDFポートフォリオのサポートはそのようなニーズに応えるものだとのことである。

クラウドベースのPDFポートフォリオを用いて情報ダッシュボードを構築した例

LiveCycle ES2には、新たにユーザインタフェースのためのフレームワークである「Adobe LiveCycle Mosaic」という製品も加わった。LiveCycle Mosaicは、LiveCycleのプロセスマネジメントと連携して、インタラクティブを構築するためのRIAフレームワークである。このツールは、それぞれ個別のバックエンドと接続されたRIAが複数あり、これをひとつの画面内で連携させて表示したいような場合に威力を発揮する。

LiveCycle Mosaicではタイル状のRIAアプリを自由にレイアウトすることでUIを構築する

LiveCycle Mosaicでは個々のRIAをタイル状のアプリケーションとして扱う。タイル状になるのはそれ単体でも動作する独立したアプリケーションである。これはFlashアプリケーションだけでなく、HTMLやAjaxなどで作られたものでもかまわない。タイルの作成はAIRアプリケーションとして提供されるMosaicデザイナで行うことになるという。

作成したタイルはひとつのページ内(このページはFlashで構築される)に自由にレイアウトして配置することが可能で、ユーザ自身がこれを移動させることもできる。そしてタイル同士はJavaScriptを用いて通信することができるようになっているため、ページ内のRIAが相互に連携することも可能だという。たとえばあるタイルでユーザ名が選択されたら、そのユーザの情報をバックグラウンドのシステムから取得して、別のタイル上でPDFとして表示するなどといった連携も実現できる。

このようにLiveCycleではプロセスマネージメントとの連携やタイル同士の相互連携がシームレスに行えるようになっている。これが、ポータルのように独立したウィジェットを配置してサイトを構築するものとは本質的に異なっている点とのことである。その上でタイル単体の再利用性や独立性も確保されるため、必要な機能が集約されたリッチアプリケーションを高い生産性のもとで構築することができるわけだ。