Intuos4にもない新機能「タッチアクション」

ペンタブレットの本体表面をほぼすべて、ノートパソコン同等のトラックパッド化を可能とする新機能「タッチアクション」(マルチタッチにも対応)。タブレットを使ったことが無い人にはピンと来ないと思うが、ペンタブレットは基本的に専用のペンを用いて、ポインタを動かす。そのため、指で触ってもポインタは動かない。しかし、新型Bambooではペンでも指でも操作可能になっている。「ペンで操作するためのツールなんだから、指で操作する必要はないのでは」と思う方は、マウスの「ホイール」の様なものだと考えてほしい。ポイント操作とは別に、スクロール操作ができることで、マウス操作は随分楽になっている。ペンタブレットを利用しているときでも、ペンによるポイント操作と同時に使えるスクロール方法があれば、大幅に操作性が上がる。また、ペンを持つ手では、キーボードの操作がやりにくいことや、ペンという形状ではマウスのように多ボタン化やホイールを内蔵することが難しく、それを補うため、歴代のペンタブレットではファンクションキーを盤面に設置したり、トラックパッドを描画エリアとは別に用意したりと、色々工夫がなされてきた。そして新型Bambooでは、最新のIntuos4にも搭載されていない、ほぼまるごと盤面全体をトラックパッド化という新機能を搭載したというわけだ。

旧Bamboo(左)にはトラックホイールという、iPodライクのトラックパッドが搭載され、スクロール(1方向のみ)などに利用できた。新型Bamboo(右)では、盤面全体がトラックパッドとして使えるのでデザイン的にすっきりしたものに進化した

トラックパッド機能で可能な操作は、AppleのMacBookProのマルチトラックパッドとほぼ同等。一本指でポインタ移動、二本指でスクロール(縦/横/斜め)、二本タップ(指でたたく)で右クリック操作、二本指の間隔を開いたり閉じたりすると画面の拡大縮小、二本指を回転させると画像の回転ができる。MacBookProユーザーにはおなじみの機能だが、はじめて触るユーザーにとっては新鮮な驚きを感じることだろう。特に二本指スクロールは縦/横/斜めを自由に動かせるので、PDFや表計算ソフトの閲覧でも非常に便利だ。ただし、アプリケーションが対応していなければ、これらの機能はかなり限定したものになる。回転、ズームまでフルに対応しているのは現時点で「Photoshop Elements」(Winのみ)、「PhotoShop CS4」、「Painter Essential」などごくわずか。ただし、スクロールについては、ブラウザやオフィスなども含め、ほとんどのアプリケーションで利用できる。

タッチ機能は環境設定で有効/無効を設定できる。右側にはアニメーションでどのようにジェスチャーすればよいかが表示される。各ジェスチャーの機能は変更できない

二本指操作は快適だが、ペンを使いながら手のひらをつくと、誤操作になるのではないかと不安になるかもしれないが、その心配はいらない。ペンと指の両方で同時に操作を行うと、ペン操作が優先され、ペンを使っている間は指での操作は無効になる。スクロールなど、指で操作したい場合は、ペンを盤面から浮かし、指で操作する。

ペン操作時はLEDがオレンジで指での操作は無効。ペンをある程度浮かせるとLEDが白になり、指での操作が有効になる。左手はもちろん、慣れればペンを持つ手でも、ペンを浮かせて小指と薬指でスクロール操作ができる

また同製品は、ペンを使わず、トラックパッドとして利用することも考慮されている。トラックパッドと違い、クリックボタンはないが(左右ボタンを盤上ボタンに設定することは可能)、人差し指でカーソルを動かしたあと、親指で盤面をタッチするとマウスボタンを押しているのと同じ状態になる。また中指でクリックするとマウス右ボタンをクリックするときも同様だ。ふたつ目のタッチが最初と比べて右か左かによって、マウス左クリックか右クリックかを判断している。

人差し指でポインタの位置を移動、中指をタッチすると右クリックになる。親指でタッチが左クリックに相当し、ホールド状態でドラッグできる。アクションだけでマウス、トラックパッドボタン同様の操作を実現している

ただし、この方法には誤操作が生じる可能性があるため注意が必要だ。エリアが広いので、ペンを持たずにトラックパッド感覚で指だけで操作をしていると、つい手の平がエリア内に入ってしまい、意図せず「二本指操作」として認識されてしまう。この機能はオフにすることもできるため、誤操作が多いようならオフにしてしまうのもいいだろう。

ミドルサイズは盤面が大きいため、手のひらが反応エリアに入りやすい。筆者の手はかなり大きい方ではあるが、指だけで操作をしていると、手のひらが触れて誤操作になってしまう

従来、独立していたトラックホイール部分がなくなったおかげで、本体のデザインは非常にすっきりしたものになった。自分で好きなコマンド(キーボードショートカットの実行など)を割り付けられるファンクションキーは4つ。左右非対称のデザインだが、ドライバの設定により、ボタンを左右どちら向きにでも設置できる。

ファンクションキーにはキーボードショートカットなどの機能を割り付けることができる。タッチ機能のオン/オフもファンクションキーで行える

シンプルなデザインは好感がもてるが、ボタンが盤面と高さに差がない点がやや気になった。Intuos4では誤操作を防ぐため、ファンクションキーを一段深く彫りこまれたデザインにしていたが、同製品では盤面と同じ高さであるため、意図せずボタンを押してしまうことがある。特にキーボードをタブレット本体の向こう側に置いていると、手をのばしたときに腕がボタンに触れてしまう。キーボードとの配置には注意が必要だ。

キーボードショートカットを使うため、手をのばすと、タブレットのファンクションキーに腕が触れてしまう

指での操作は有効/無効の切り替えのみで、任意のコマンドやアプリケーションごとの設定ができないのが残念だ。二本指でのズーム操作は絵を書くときは便利だが、ブラウザでうっかり操作してしまうと、文字サイズが大きくなってしまう。アプリケーションごとに有効/無効の設定可能になれば、より使いやすくなるだろう。