Newtonというデバイスをご存知だろうか? Appleが発表したPDAとして注目を集めながらも、ライバル製品として登場したPalm Pilotらが市場を席巻し、Newton自身は1998年に密かに歴史の1ページへと消えていった。それから10年、AppleでNewtonの開発を担当していたMichael Tchao氏が9月28日に再び古巣に復帰したことを、米New York Timesなどが伝えている。

"Newton"こと、Newton OSを搭載したMessage Padという製品がAppleからデビューしたのは1993年。当時のCEOであるJohn Sculley氏の肝いりプロジェクトとして推進されていた経緯がある。ARMプロセッサを搭載したハードウェアに、手書き認識と先進のオブジェクト志向プログラミング言語を組み合わせたソフトウェアを盛り込んだ野心作だったが、値段が高かったうえに当時の処理レベルを越えた機能が組み込まれていたこと、さらにはPDAというには大きいタブレットPCの前身ともいえるサイズだったこともあり、携帯性と軽快性に優れたPalmに覇権を譲ったとも言われている。

このNewton開発者だったTchao氏が15年ぶりに再びAppleに呼び戻されたことは、いくつかの憶測を呼んでいる。その1つが長らく噂されているAppleのタブレット型デバイスの存在で、この開発のてこ入れを行うためにTchao氏が招へいされたと言うのだ。NYTによれば、同氏は最近までシューズメーカーで有名な米Nike Techlabのジェネラルマネージャを務めており、iPodと連携してトレーニングに活用できる「Nike+」の開発に携わっている。こうした経緯もあってAppleとはいまだ親交があり、復帰のきっかけとなったようだ。また2010年登場が噂されるタブレット型デバイスでは、以前に同社が買収したP.A. Semiの省電力プロセッサ技術が活用されると言われており、Tchao氏の復帰の件と合わせ、今後の展開が楽しみだ。なお、AppleでのTchao氏の新役職は製品マーケティング部門バイスプレジデントとなり、Phil Schiller氏の直下に就くことになる。