米国電気電子学会(IEEE)は9月11日(米国時間)、同標準化委員会が無線LAN規格「IEEE 802.11n-2009」を承認したと発表した。現行で市場に出回っている802.11n製品は「IEEE 802.11n-2007」をベースとしたDraft 2.0を準拠としたもので、通信速度100Mpbsオーバーをうたっているが、今回承認された802.11n-2009をベースにしたフル規格の802.11nでは理論上の最大速度で600Mbpsに達する。
仕様策定開始から7年近くが経過した802.11nだが、ようやく最終仕様へと到達することとなった。802.11nと従来無線LAN通信方式との大きな違いは、MIMO(Multiple-Input, Multiple-Output)方式によるデュアル(もしくはトリプル)の受送信アンテナを搭載したことにある。複数アンテナにより通信の安定性が増したほか、チャネルボンディング(チャネル合成)と呼ばれる2つのチャネル(1チャネルは20MHz)を組み合わせる方式で、1チャネル時のおよそ2倍の速度での通信を可能にする。
現行で市場に出回っている802.11nは「Draft N」の名称で呼ばれており、1チャネル時で最大150Mbps、2チャネル時で最大300Mbpsでの通信が可能とされているが、今回標準化が承認されたフル規格の802.11nでは1チャネル時で最大300Mbps、2チャネル時で最大600Mbpsの理論速度に達する。なお、チャネルボンディングは国によっては利用が承認されておらず、その場合は1チャネルでの通信のみが利用できる。また2.4GHzと5GHzの両帯域での通信に対応しており、うまく使い分けることで既存の802.11b/gの通信と共存したり、より安定な通信を実現できる。
今後出荷開始される無線LAN対応製品の多くは、この802.11n-2009をベースにしたチップを搭載して登場することになる。また既存のDraft 2.0をベースにしたPre-802.11n製品群についても、その多くはファームウェアのアップデートで対応可能とみられる。