埼玉・所沢にある西武鉄道旧所沢車両工場の跡地にて、『第1回所沢ビエンナーレ美術展「引込線」』が開催されている。開催期間は9月23日まで。

同美術展は、「作家主導」、「展覧会テーマを設けない」、「作品の形体、形式、思想を限定しない」、「出品者の人選は、可能な限りゆるやかに」といった枠組みのもとで繰り広げられており、ベテラン作家から若き気鋭作家まで、多彩な顔ぶれの作品が一堂に会するところが特徴だ。そんな美術展のなかから、選抜したいくつかの作品をこれから紹介していこう。

第1回所沢ビエンナーレ美術展「引込線」の正面ゲート

車両工場内をそのままギャラリーとして利用しており、多種多様なアート作品が展示されている

Bild:Muell#4 Kern

瀧健太郎の作品「Bild:Muell#4 Kern」。文化庁派遣芸術家在外研修員としてドイツ・カールスルーエのZKM内の美術大学HFG-Karlsruheにて、ビデオ・メディア芸術を研究してきた瀧。同作品は、ひとつのプロジェクターから、複数の立体画面にランダムに映像が照射されるという、映像と彫刻を融合させたビデオインスタレーション作品だ。映像が溢れている現代の情報社会をひとつのパッケージにして表現しているとのこと

runways/滑走路

「記憶や時間を内包する風景やモノや人」をテーマに、写真集や雑誌、個展、ワークショップと幅広く活躍する下道基行。今回展示している作品「runways/滑走路」は、日本地図の中に直線的に存在する風景をrunways/滑走路としてとらえ、撮影してきた5つの景色を、その場所の地図とともに並べて配置している

PANTA RHEI - すべては自然の循環の中に -

およそ3メートル四方の鉄の版画作品「PANTA RHEI - すべては自然の循環の中に -」。作者は溝口達也。同作品は、一見ドットの集合のようにも見えるが、エッチングによって、とある日本の地図が彫られている。平面上には鉄の地図が、その向こうの壁にはその元となった地図が描かれている。日々生活している東京の街を、『時』というキーワードと共に描いているとのこと

Train in Vein

短編の映像インスタレーション作品「Train in Vein」。作者は、「The Creative Act」や「Unknown Binding」など、インスタレーション的な作品を中心にあらゆるメディアを用いて作品を発表し続けている白井美穂。この作品には、開国をもたらしたペリーを思わせる映像などが連続的に折り込まれており、歴史と現代の不条理なつながりや、ズレの感覚などが描かれている

アーティスト難民

必要最低限のモノに囲まれた6畳間を再現している、増山士郎の作品「アーティスト難民」。大学で建築を学び、4年間、フリーランスの芸術家としてベルリンに滞在し、2009年8月に帰国した作者。その作者の今を描くパフォーマンス的な作品だ

river / star while daytime

志水児王の作品「river / star while daytime」。音響や振動現象、テクスト、ドローイングなどを主な表現素材とし、芸術と自然科学との関係など実証論的なアプローチを試みる志水氏。何も写っていないように見える大きな白黒写真が床に配置されている。「見えなければ存在しないのか」というテーマから、あえて昼間に星座を撮影しているシリーズだという

boat

鏡面部分に顔を付け、そこに映る世界を眺めることができる作品となっている、伊藤誠の作品「boat」。これまで伊藤氏は、プラスチック、ゴム、ステンレス、鉄など、日々の暮らしのなかで使用されいてる素材を用いて、現実の空間を転覆させたような空間をつくり続けている。同作品では、ボートの形をしている鏡面部分に逆転した世界が映り、現実と非現実の世界を一度に見ることができるという

「BODY SCALE」 - movement -

長年にわたり身体をテーマにして「BODY SCALE」というテーマで作品を発表し続けている、中山正樹の作品『「BODY SCALE」 - movement -』。この作品は、イタリアで起きた未来派宣言(1909年)から100年という節目を迎えるの機に制作したもの。未来派宣言を振り返り、作品で検証するというテーマのもと、肉体の動き、スピード感などを表現しているという

昨年に開催された所沢ビエンナーレ・プレ美術展「引込線」は、17日間で5,000人近い入場者が訪れた。今年は、昨年と比較し、さらに展示空間を拡大したほか、参加クリエイター・佐藤万絵子による公開制作も会期中随時行なわれる予定だ。

第1回所沢ビエンナーレ美術展「引込線」

開催期間 9月23日まで(会期中無休)
観覧時間 10:00~18:00
料金 入場無料