"玄関のドアスコープ"を着けると、魚眼レンズ風の写真が撮れる。レンズが引っ込んでも大丈夫なように、接着したりせずにただかぶせているだけ ※「EX-H10」に装着の図

これまで手作りのレンズを使って写真を撮ったり、わざと手ブレを生かした写真を撮ってみたりと、さまざまな写真技法を試してきた。なぜそんなことをやっているのかと言えば、第一番目の理由は〈面白いから〉。あるアイディアが浮かび、それを形にしていく上での試行錯誤の工程というのが楽しい。

たとえば、オモチャの双眼鏡のレンズを使って写真を撮ろうと思った時に鏡筒の素材はどうするか? カメラにはどうやって装着するのか? なんていうことを考えて、100円ショップをうろついてみたり、手を動かしている時間が面白い。

100円ショップで買った望遠鏡工作キットのレンズを1枚だけ使って撮った写真。トイカメラを使ってもこんな味のある描写にはならない

手作りの蛇腹レンズ。カッコ良さげだが、黒い色上質紙を折っただけの単純な作り。ボディキャップに穴を開けたものを使い、カメラに取り付ける

そして第二番目の理由としては、今までに見たことのないような写真が撮ってみたいということ。写真というのは、誰でも簡単に写せてしまうけど、「この発想ってなかったよね」というような、新しい写真が撮ってみたい、と思っている。ただ、変な実験をするだけではなく、いちおうその成果を残したいということだ。

といっても人から見れば、くだらない実験をしているようにしか思えないかもしれない。たとえば、最近のシリーズとしては、輪ゴムで一眼レフカメラをぶら下げて撮り歩くというのがある。シャッタースピードを遅くして意図的にブレた写真を撮影するということだ。

輪ゴムで一眼レフをぶら下げながら撮影した一枚

これは何かを撮ろうという意図と、意図とはまるで関係のない偶然を、一枚の写真の中に閉じ込めてみたい、というあたりから発想した技法だ。とは言ってもカメラをびよんびよんさせながら、渋谷の街を徘徊する姿というのは、端から見ればちょっと異様だろうな、とは思っている(笑)。

ガラスフィルターに穴を開け、クリスタルガラスの球を接着。透明な塩ビを使えば、工作は簡単にできる

その他にもいろんなシリーズがある。たとえばビー玉写真や万華鏡写真。ビー玉写真というのは、ビー玉を使って撮影をするシリーズだが、素材は普通のガラスに限らず、クリスタルガラスや天然水晶、アクリルや消臭ビーズなど、透明な球は手当たり次第試してみた。描写で言えば、天然水晶の柔らかな味わいというのは、なかなか美しいと思う。

それから万華鏡写真というのは、その名の通り万華鏡を使って写真を撮ることだが、ポイントはカメラのレンズ径に合わせて鏡をカットし、専用の万華鏡を作ること。レンズの先に装着することによって、世の中のいろいろなものを万華鏡化することができる。

透明ガラス球を使って撮影した写真。試作を重ねた結果、けっこうきれいな写真が撮影できるようになってきた

小さな花びらや葉っぱをガラス板の上に載せ、透過光を使って撮影。ガラス板をズラすことにより、見え方もどんどん変化する

普通は万華鏡の中に具材を入れておくけれど、世の中のすべてが万華鏡化できるので、万華鏡の中には入れられない生花などが素材として使えるところが面白い。また透過光や反射光など、被写体によってライティングを変えれば、違ったイメージの写真にすることができる。「写真とは何か?」なんていう理屈の世界からは離れ、純粋にイメージの世界に身を委ねられるところが楽しい。…つづきを読む