竹中工務店は、建物の壁面でつつじ類やハナミズキなどの樹木を植栽できる「樹木対応型壁面緑化システム」を開発したと発表した。新開発の繊維補強セメント製植栽パネルを使用するもので、従来の"つる植物"などの草本類を中心とした壁面緑化とは異なり、樹木に対応できることが特長。同社が設計や施工を行う物件で導入を進め、価格は1m2あたり約15万円(植物の種類や施工条件により変動)。

植栽パネルによる壁面緑化の様子(2009年6月)

同緑化システムでは、600(幅)×900(高さ)×70(奥行き)mmの大きさの植栽パネルを複数枚壁面に取り付ける。植栽パネルは4層構造で、繊維補強セメント製の植栽ポットを配した表面パネル、断熱ボード、保水性/排水性/通気性/保肥性を持たせた不織布製の中間層、リサイクルボードから構成され、1枚あたりの重量は約45kg。外壁と独立した同パネルは着脱が可能なため、新築、既存建物を問わず設置できるとのこと。

植栽パネルの構造図

植物の根は、個々の植栽パネル内だけではなく壁面の植栽パネル全域に自由に張らせることができ、この構造により樹木を植えることが可能になったという。同システムによる緑化に適する樹木としては、クロマツ、アスナロなどの針葉樹、サザンカ、ベニカナメなどの常緑広葉樹、ハナミズキ、イロハモミジなどの落葉広葉樹、アジサイ、ユキヤナギなどの灌木類といった花木を含む中低木の植物を挙げている。

そのほか、灌水タンクと制御盤を持つ自動潅水システムを備え、ドリップホースを植栽パネル全体の最上部に設置して潅水を行う。水の量や灌水頻度は年間分の設定ができ、液体肥料を灌水タンク内に混ぜることにより施肥も可能。

同社では今回の緑化システムの実証試験を2006年から行い、植物が健全に生育することと植栽パネルの安全性や耐久性を確認したとのこと。剪定や薬剤散布などを定期的に実施することで永続的に緑化景観を維持することができ、樹木の壁面緑化が進むことにより都市景観の向上および省エネやヒートアイランド緩和効果が期待できるとしている。

同社による実証試験の様子。左から2006年7月、2007年6月、2009年5月の状態