ソフトバンクモバイルの松本徹三副社長

東京ビッグサイトで開催されたワイヤレス関連の総合展示会「ワイヤレスジャパン 2009」の基調講演で、ソフトバンクモバイル取締役副社長の松本徹三氏が、モバイル通信情報サービスの将来像と同社の今後の戦略について語った。

松本氏はまず、ソフトバンクモバイル設立の経緯を振り返った。2006年に行ったボーダフォン買収の理由として、「家でパソコンを使用する時間は限られているが、それよりも遥かに大きな時間を持つモバイルインターネットの分野を開拓したかった」と説明。これまで行ってきたPC向けインターネットサービスに加えて、モバイルインターネットサービスも提供することで「市場は倍になる」と予測したという。

さらに、日本では携帯通信事業者が、無線ネットワークのみならず、端末の企画と流通までをコントロールしている点も理由に挙げた。松本氏は、日本の通信事業者は、「自ら端末を購入して、自ら宣伝広告を行う。端末ベンター、販売店、サービス・コンテンツプロバイダーを一体化するインテグレーターとしてネットワークオペレーターがある」とし、「販売店で端末を購入したら、その端末を提供する通信会社に通話料などの収入すべてを獲得する仕組みになっている」と説明した。

講演冒頭ではソフトバンクの沿革が語られた

日本の携帯サービスのエコシステム

また欧米の通信会社は、日本の通信事業者のワンストップなシステム事業モデルを「羨ましいと思っている」と述べた。しかし、このような通信会社主導のビジネスモデルは寡占が発生しやすいといった問題もあると指摘している。

続いて松本副社長は、今後の移動通信事業者の収入は「音声通信からデータ通信に移行」し、インターネットのアクセスは、「携帯電話からのアクセスが増加していく」傾向にあると説明。その例として、SNSサービス「mixi」のPVの70%がケータイからのアクセスであることを紹介した。

今後の収入は音声からデータへ移行すると予測

mixiのPV推移

このほか、2008年7月に販売を開始した「iPhone」についても語られた。松本副社長はiPhoneを「大きく美しいスクリーンと簡単で快適な使い勝手が、熟年層などITリテラシーの低いユーザーをもひきつけた」と評価。加えて、ワンストップでコンテンツをダウンロードできる「App Store」を「コンテンツのディストリビューションのあり方を変 えた」と述べた。

最後に同社のネットワーク計画について説明があった。松本氏は、「来年の3月にはすべてが3Gになる。そのほとんどはHSPA。HSPAは現在、端末の比率では40%だが、HSPA基地局は人口の80%をカバーしている」と述べ、着実にネットワークの拡充が行われていると説明。将来のネットワーク展開については、LTE本格導入までは、1.5MHz帯でHSPA+を提供すると説明。「10MHzであればスループットはLTEとほとんど変わらない」との見解を示している。ただし「妥当性があればLTEにアップグレードできるようになっている」という。本格的なLTE導入は2012~2013年とし、700-900MHz帯の電波免許の取得を取得したいと語る。

今後のソフトバンクのネットワーク戦略。LTE本格導入までは、1.5MHz帯でHSPA+を提供

また、現在のモバイル通信の課題としてカバレッジの安定性を挙げた。これには、マクロセルにピコセルやフェムトセルを重畳させることで生じる問題を防ぐ、SON(Self Organizing Network)などの開発・標準化を促進させると説明。ビルや地下街などの置局問題については、通信事業者のみでの解決は不可能とし「国の支援を期待する」としている。将来的に50~200倍に増加すると予測しているトラフィックについては、利用場所とサービスの性格により、3G、無線LANなど異なるネットワークを使いわけて、トラフィック負荷を支える方針であると説明した。

ネットワークの拡充は順調に進行中であると説明

最終的にはモバイルネットワークだけでなく、複数のネットワークを使い分けてサービスを提供