成功のポイントは導入チームの理解

平松氏は、仮想化のメリットとして、サーバ統合によるコスト削減だけでなく、可用性を高められる面も大きいという。どこの会社にも絶対に停止できないサーバというのが存在しており、仮想化が未導入の場合、なかなかメンテナンスのために停止するということができなかったが、仮想化であれば、ライブマイクレーションによって他のサーバに移動させ、メンテナンスを行うことができるようになる。

仮想化を導入しようとしている企業が懸念する点は、どれくらいのサーバを載せることがきるのかという明確な基準がないということもあり、パフォーマンス面だという。ただ、「実際に仮想化環境を導入した企業に多いコメントは、思ったより安定しているんだね、というものです。みなさん、最初は慎重に3-4台を1台に統合するケースが多いのですが、運用を始めると『VMwareなら、まだまだ載せられる』とおっしゃって、運用開始以降集約率を高められるケースが多いですね。」と大城氏が語るように、実際導入された企業でパフォーマンスが問題になるケースはあまりないようだ。

平松氏は「仮想化を導入するというのは、システムを管理する立場の人にとっては、大きな変化になりますので、それに対する不安というものがどうしてもあると思います。ただ、実際に運用中のサーバの稼働率やDISK I/Oの統計をとると、パフォーマンスが不安になるようなデータになることはほとんどありませんので、それで納得されるケースが多いですね。VMwareであれば最近は、10台以上を1台に統合するケースが普通になっています」と語る。

現在の仮想化は、開発系が中心というイメージがあるが、基幹系で導入するケースも増えてきているという。ひまわり証券では、2008年3月、VMware ESXのサーバ上で数十のの仮想化マシンが動作するシステムを稼働させている。 「ひまわり証券のシステムは、FXオンライントレードを仮想化環境で動かすもので、処理するトランザクションも多く、止まった場合には大きな問題になるシステムが、問題なく動いています」と、平松氏は金融というとくに信頼性が求められる分野でも仮想化導入が進んでいる点を指摘した。

導入の成否を決めるポイントは、導入チームの理解にあると平松氏は語る。「比較的仮想化に詳しい企業の人でも、本音で話してみると自分が担当するサーバは仮想化したくない、とおっしゃることがあります。なんとなく不安なんですね。ですから、成功のためには、導入チームが仮想化の仕組みと意義をきちんと理解することが重要です。そして、統合率をアップさせるための取り組みを行わなければなりません」

また、導入するにあたって、システム全体を仮想化することにこだわらないこともポイントになりそうだ。仮想化でサーバ統合を行う場合、現状環境の調査「キャパシティプランニング」を実施して統合比率を調査するか、とりあえずは3台程度のサーバを1台に集約し、試験的に利用することが多いという。そして、負荷や稼働状態を確認しつつ集約率を上げるのが一般的だが、仮想化する部分を見極めて統合すればかなりの集約率が実現できるという。

「思うように集約率が上げられない場合、その障害となっている部分を分離することで全体的な効率を上げることができる場合もあります。たとえば、大量データ書き込みをされるファイルサーバは仮想化せずにNASに統合するというようなやり方です。 全部を仮想化する必要はないのです」と平松氏。仮想化に向いたシステムと向かないシステムを見極めることや、障害となっている部分を切り分けることにも適切な知識が必要だ。

クラウド時代への準備としても仮想化は有効

仮想化と並んで注目されているのがクラウドだが、クラウド利用を視野に入れている企業にとっても仮想化は有効だと平松氏は指摘する。「ハードウェアにOSを乗せ、システムを乗せている間はその関係性を切ることができませんが、一度仮想化してしまえば、後はどのハードウェア上で動いていても同じです。いずれクラウドの時代は来るでしょうが、今注目されているAmazon等の特定機能を提供するクラウドだけが主流になることはないでしょう。外部サーバを自社にあるように使えるようになった場合、すでに仮想化してあれば稼働させるサーバを変更するだけなので容易にクラウドを利用し始めることができるはずです」