生きている"インテリジェンス"は育てるもの

米野氏は、「一昔前、ナレッジマネジメントが注目を集めていたが、ナレッジとインテリジェンスは違う。ナレッジは過去の蓄積であるのに対して、インテリジェンスは今生きているもの。また、インテリジェンスは個人の中にのみ存在しており、それをビジネスに活用できるように組織全体で育てていく必要がある」と説明する。

インテリジェンスは数字だけから生み出されるものではなく、関連する形式化された情報や人の頭の中のナレッジをつなげていくことが必要だという。「それら雑多な情報に対し、BIによって事実というフィルタをかけることで、インテリジェンスの精度が上がっていく」

その際、「定型的な手法は使えない」と、同氏は指摘する。というのも、「人と情報」や「人と人」のつながり方はビジネス環境ごとに千差万別で、標準化できないからだ。「データという事実をタグのように用いることで、個人・組織は思考の軸を定めて関連情報を利用・交換することができ、スピーディで的確な意思決定とインテリジェンスの育成が可能になる」

同社では人と情報を効率よくつなげていくことを実現する製品として「Microsoft Office SharePoint Server 」を提供しており、構造化しきれない部分のBIを同製品によってカバーしていこうとしている。

ExcelベースのBIの良し悪し

同社に限らず、企業で広く利用されているExcelをフロントエンドとするBIを提供しているベンダーもいくつかあるが、デスクトップアプリケーションであるExcelをBIシステムの中で利用する際は注意が必要だという。

「他社が提供しているExcelがフロントエンドのBIは、印刷して人に見せることに主眼を置いたものが多いが、それは単なる帳票であってBIとは言えない」と、同氏は指摘する。BIとは思考の過程を支えるものであって、欲しい時に欲しい情報が使えるものが本来の姿だというわけだ。「真剣にビジネスを追及する経営者にとって必要なのは、出来上がった見栄えのよいグラフではないはず。むしろ経営者であれば、単なるスプレッドシートからでもさまざまな分析を行いたいと思うのが当然」

もう1つの問題点は、コピーなど、ファイルであるがゆえの管理の難しさである。特にこのファイルが予算や計画に関わる重大な情報を含むものだったら、厳密なアクセス制御やバージョン管理だけでなく、誰が最新のコピーを保有しているか、誰がどこまでどのような作業を行っているか、などの把握が必要になる。同社の場合、SharePoint Serverを活用することで、こうした問題を解決している。

また、同氏は「Excelはあくまでも個人のインテリジェンスを向上させるためのBIツール。個人のインテリジェンスが持つ価値を組織全体で最適化し、"1+1=3"となるようにするには、人と人をつなげていくことが不可欠であり、それを実現するのがBIシステム」と、最後にあらためて"人と人をつなぐ"ことの重要さを強調した。

BIという単語を聞いてしまうと、「マネジメント層のためのツールであり、自分には関係のないもの」と思ってしまいがちだが、自身の業務の意思決定を正確かつ俊敏に行うことを可能にする手段として、BIは大いに有効だと言える。自身の業務に向かう姿勢を再考させられるインタビューだった。