ClearTypeのように高解像度でも利用できるフォントレンダリング技術の登場は、PCディスプレイ上で読まれることを前提としたフォントのデザインに大きな影響を与えた。Windows 3.1のTrueTypeフォントとして、インクがにじむスペースを考慮してデザインするなどの活版印刷時代の書体の特徴を引き継いだTimes New Roman、Arial、Courier Newの3書体が主要フォントとして使われた。これらの書体では、10、または12ポイント程度のマスターサイズがアウトラインデータとして設定され、写植で使われている技術と同じようにディスプレイの解像度に合わせて縮小・拡大を行うことでサイズの変更を実現している。

前述の通り、低解像度向けにフォントを整形するのは多くの時間を必要とするため、96ppiのBi-Level Rendering設定向けにTahoma、Cerdana、Geogia、Trebuchet MS、Comic Sans MSの5書体を新たにデザインした。これらのフォントは各サイズごとの整形は必要とするものの、中位サイズを基本として作られているために処理の手間や時間がまだ少ない。Windows Vistaでは、Calibri、Cambria、Consolas、Corbel、Candara、Constantia、UI向けの新フォント・Sagoe UI、日本語フォント・MeiryoがClearType Collectionとして追加された。なお、これらのフォントの開発の中で、サイズごとに細やかな整形を行うのはClearTypeのみとし、Bi-Level Renderingでは行わないことが決定された。

Windows 7のClearTypeフォント

Windows 7では、Microsoft OfficeとInternet ExplorerはClearTypeをデフォルトとして使用することが予定されている。Bi-Level RenderingではなくClearType向けフォントを利用するアプリケーションではClearTypeが選択できるほか、サブピクセルレベルの配置や「natural width ClearType」といった精密な文字幅が要求されるアプリケーションでは、Bi-Level Renderingやグレイスケールレンダリングに変更することでリフローが行われる。また、この例に当てはまらないAdobe ReaderなどのアプリケーションやJava on Windowsなどのプラットフォームでは、Windowsのグラフィックプラットフォームからは独立したテキストレンダリングエンジンが組み込まれている。

Windows 7 Explorerでは、ClearTypeが有効になる場合もあり、Segoe UIを美しいデザインで利用できる。システムフォントの変更は、ダイアログボックスの文字のリフローやラッピングによるテキストの消失、ボタンの文字の消失といった問題を引き起こす。各国でさまざまなフォント設定が使われていることは理解しているものの、信頼性を保つために現状ではシステムフォントの自由度を上げることはできない。

ClearTypeの調整機能を盛り込んだことにより、ClearTypeが使えない状況でのフォントの取り回しの制約がやや緩和された。Microsoft OfficeのデフォルトフォントであるCalibriは、スムージンググレイスケールが選択された場合にフォントレンダリングの質を向上させるためにイレギュラーな手法が使われている。フォントサイズが小さい場合にスムージングを無効にしてにじみを解消するという通常の手法とは逆となるが、フォントサイズが小さい場合にグレイスケールを有効にしてフォントをはっきりと表示するのだ。また、主要なフォントサイズではアウトラインファイルに組み込まれたビットマップフォントが用意され、リモートターミナルでCalibriが使われている場合や、リモートターミナルでパフォーマンスを向上させるためにClearTypeが無効となっている場合にBi-Level Rendering設定で使われる。