NTTと電通が共同で大規模なフィールド実験を行ったことでも分かるように、デジタルサイネージは広告代理店の立場からも大きな期待が寄せられている分野だ。そこで今回は、2007年6月のデジタルサイネージコンソーシアム設立時から参加している電通でアウト・オブ・ホーム・メディア(OOH)関連の事業を担当している中野氏と益子氏に、広告代理店から見たデジタルサイネージの魅力や今後の課題などについて聞いた。

OOH領域は人々に触れやすい環境へ

電通 アウト・オブ・ホーム・メディア(OOH)局 業務管理部 プロジェクト・マネージャー 中野雅之氏

まず、広告代理店の視点から見たデジタルサイネージへの期待度について「市場規模を含めてさまざまな予測がありますが、広告メディアとして今後の市場ポテンシャルに大きな期待を寄せています」と語るのは、電通 アウト・オブ・ホーム・メディア(OOH)局 業務管理部 プロジェクト・マネージャーの中野雅之氏だ。

中野氏が注目するデジタルサイネージの魅力は、特定のタイミングを狙った出稿が行えること。日程や時間、場所などをピンポイントで指定できるため、クライアントニーズを満たすメディアに成長する可能性が高いのである。また、デジタルメディアとして従来のポスターやステッカーなどアナログ系広告にないメリットを持っているのもポイントといえる。

ちなみに事業局名に含まれている「OOH」とは、4大マスメディアおよびインターネットを除いた家庭以外で見られる広告のことだ。電車内をはじめとした交通広告、看板や街頭ビジョンに代表される屋外広告などがあり、デジタルサイネージもその一分野と考えられる。

電通 アウト・オブ・ホーム・メディア(OOH)局 屋外メディア部 兼 企画業務推進部 益子幸司郎氏

OOH局 屋外メディア部 兼 企画業務推進部 の益子幸司郎氏は「生活習慣の変化から、家の外で過ごす平均外出時間が2000年と比べて30分-1時間ほど増えているという統計もあります。結果として、OOH領域が人々に触れやすい環境になっているわけです」と、OOHおよびデジタルサイネージの有効性を語る。

電通では、ブランドと消費者を結ぶ接点の中から最適な組み合わせやタイミングを発見し、効果的な統合型のブランディングキャンペーン戦略を立案する独自メソッド「コンタクトポイントマネジメント」を展開している。このメソッドでは、どれだけ消費者との接触機会があるか、つまり人々の行動導線や行動パターンがマーケティングの重要ポイントであり、中野氏は「私たちは日頃から人々が滞留したり、広告を目にする機会の多い場所などを分析しています。そこには、当然ながらデジタルサイネージ以外にもさまざまな広告の種類があり、ロケーションに合った最適な手法を探すことが大切です」と語る。

デジタルとアナログの差はもちろん、デジタルの中でも静止画に近いデジタルポスターとテレビCMなどの動画コンテンツでは効果が大きく異なる。各ロケーションに最適なコンテンツ、ハードウェアやソフトウェアが何かを検証することで、クライアントに対して最大限の提案ができ、フリークエンシー(広告接触頻度)やリーチ(広告の到達率)へと論理的につなげられるわけだ。