一方、プロセス革新例としては、リチウムイオン電池を生産するエナジー社和歌山工場において、シミュレーション技術を活用することで乾燥プロセスを省エネ化することに成功したという。

パナソニック 生産革新本部 生産技術研究所 環境生産技術開発グループ 中裕之グループマネージャー

パナソニック生産革新本部生産技術研究所環境生産技術開発グループ 中裕之グループマネージャーは、和歌山工場でのプロセス革新による環境成果について次のように語る。

「これまでは、炉のヒーター温度やノズルの吹き出し風速で乾燥条件を規定していた。だが、新たな方式では、簡易乾燥実験による塗布材料の乾燥特性の把握、炉内温度策定や表面風速測定により、基材そのものの温度や、基材直上の風速を測定・抽出することで、乾燥現象をシミュレーションによって正確に規定し、その条件を忠実に実機炉で再現した。多くのカット&トライを行わず、シミュレーションによって結果を導き出すことができ、短期間で量産導入が可能になった」とする。

同社ではこれをモノから見た測定方法であることから「モノの目目線理論」と呼称している。

和歌山工場における2008年度の生産実績は2倍に拡大しているが、こうした取り組みもあり、CO2排出量は1.1倍に留まったという。「原単位では前年比46%の削減となった。こうした成果は、現在建設中のエナジー社の住之江工場にも応用していく」(中グループマネージャー)としている。

パナソニック全社におけるエネルギー消費の構成比は、炉が伴う生産設備で45%、それ以外の生産設備で14%、空調で18%、工場で使用する圧縮エアなどが11%となっている。

「炉の生産設備、空調、工場エアで全体の75%を占めており、ここにおける省エネ技術の開発に取り組んだ。現在、炉省エネシュミレータ、空調(ドライルーム)省エネシュミレータ、空調(クリーンルーム)省エネシュミレータ、工場エア省エネシュミレータを開発し、これを全社に広げることで、効率的に省エネが加速できるようにしている。また、ドメインの担当者がCO2削減の手法や事例を学び、自らが実践展開することで、ドイメンでのCO2削減を推進する人材を育成する省エネ生産技術研究会活動に取り組んでいる」とした。

エナジー社和歌山工場での乾燥工程における炉省エネシュミレータの応用例

なお、パナソニックでは、2009年度は、2006年度比48万トン削減の350万トンを目指す。

パナソニック全体におけるエネルギー消費の割合

ひろげるエコアイディアでは、LE活動のグローバル展開として「パナソニックエコリレー」を実施。全世界39の国と地域、パナソニックグループの342の事業場、518の具体的テーマ、約20万人の参加者を得て、植樹や清掃ボランティア、環境教室など、各地域にあったエコアイディア活動を行ったことを説明。

全世界に展開したパナソニックエコリレーの概要

さらに、チェコ共和国ビルゼン市の欧州向け薄型テレビ工場において、海外初のエコアイディア工場の認定、アジア大洋州において販売総額に占める環境配慮型製品の販売比率を2012年度までに約80%にすることなどを盛り込んだ、アジア大洋州エコアイディア宣言を行うといった活動に取り組んだ。

「今後は国内中心、大都市圏中心から、グローバルへ、地方へとエコアイディアの訴求活動を広げていく」(環境本部 岡原本部長)とした。

ひろがるエコアイディア活動の全体像

なお、エコアイディアレポート2009は、2005年から発行してきた「環境データブック」の名称を、今年から改めて発行したもの。1998年から発行してきた環境報告書を、2005年からはCSRの観点から捉えた「社会・環境報告書」に統合したが、同報告書を補完することを目的にも、昨年まで「環境データブック」を発行してきた。エコアイディアレポート2009に名称が変わっても、社会・環境報告書を補完する役割には変更がないという。

エコアイディアレポート2009

同社では、「2008年度ののブランド統一後、初めての発刊であり、エコアイディア戦略の実質的初年度の取り組み報告であることから名称を改めた」としており、巻頭特集ページを新設する一方、冊子全体のボリュームを50ページに圧縮し、親しみやすい内容にしたという。

詳細データ集は、ウェブにも掲載される予定で、掲載される内容はPDFで16ページとなっている。

 エコアイディアレポート発刊までの歴史